灰を被らないシンデレラ


圧倒的な存在感を持ちながらも一宮社長は物腰が柔らかく、こちらも比較的リラックスをしてインタビューを進められた。

しかしその雰囲気に少し亀裂を感じたのはオフレコだと前置きしたとある話題を持ちかけた時だった。


「一宮社長は愛妻家で有名ですよね。実は奥様の憂さん、僕の幼稚舎からの同級生なんですよ」


少し打ち解けたところで親近感を上げるための何の気ない言葉だった。

しかし穏やかな表情は変わらないのに、社長からはどこかひんやりとした雰囲気を感じた。


「…そうですか、憂と」
「え、ええ。まあ特に親密だったという訳ではないんですが」


ハハハと誤魔化しながら笑うが、何処か突き刺さるような視線が否めない。


ーーコレ、愛妻家っていうよりはどちらかというと…

思い浮かんだ言葉をグッと飲み込み、話題を変えようと頭をフル回転させた時だった。


「失礼します。社長、企画部からお電話です」
「分かりました。すみません、少しだけ構いませんか?」
「ハイ!どうぞ!!」










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