灰を被らないシンデレラ
平身低頭して手を差し出し社長を送り出す。
彼が部屋を出た途端に一気に緊張感が抜け、ソファーの背もたれへと身を預けた。
「何だったんだアレ、俺なんか地雷踏んだかな?」
「うーん…ちょっとした嫉妬じゃないですか?好きな人に異性の幼馴染が居たら妬けません?」
「ちょっとって次元か?」
正直ちょっとビビった。
意識し過ぎたせいで気が抜け、急にお手洗いに行きたくなってしまった。
部屋の隅で待機していてくれた総務課長にその旨を伝えると、1番近い手洗い場を教えてくれたのでその場の面々に一言断って其処へ向かった。
そこで何とか一息つき、手を洗って応接室へ戻ろうとしたところでふと男の話し声が耳に入ってきた。
聞き覚えのある声だかどこか違和感があり、気になって仕方なく悪いとは思いつつ会議室と書かれた扉を少しだけ開けると、横柄な態度で椅子に座って電話をする一宮社長が居た。