灰を被らないシンデレラ



それにしても雰囲気が真逆過ぎないか。
多かれ少なかれ誰にでも二面性はあるが、彼のそれは群を抜いている。

一宮柊の完璧な王子様像がガラガラと崩れ落ち、世の女がこれを見たらどう思うんだろうと邪推な気持ちを抱いてしまった。


「兎に角、今の仕事終わったら速攻帰る。お前の体がどれほど大事かみっちり教え込むから首洗って待っとけよ」


そう言って乱暴に通話を切る姿を見て慌てて身を引いた。

盗み見ている事がバレたらマズいと細心の注意を払ってドアを閉めて振り返ったところで、背後に立っていた社長秘書と対面した。


「うわっ!」


思わず声を上げた自分に、美女は動じる事なくにこりと微笑む。


「ご覧になりました?」
「え?あ…す、すみません!ちょっとした出来心で…」
「構いませんよ。知られて困るような内容では無いですし」


秘書だけあってある程度の会話は予想がついたのだろう。
電話の相手が誰であるのかも。





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