灰を被らないシンデレラ
「ただ社長の二重人格については、秘密でお願いします」
「あ、はい。それは勿論…」
バラそうものなら自分の今後の人生が危ぶまれるので言える訳がない。
「ありがとうございます。その代わりと言っては何ですが、この後のインタビューで1つ役に立つ事を教えて差し上げます」
「な、何でしょう…」
美女は思わず見惚れてしまうような笑顔を見せるが、その目は全く笑っていなかった。
「我が社には暗黙のルールがありまして、それが奥様…一宮憂に近付くべからず、なんですよ」
もう一度言うが美女の目は欠片も笑っておらず、それどころか呆れ切った遠い目をしている。
「社長、奥様の事になると途端にポンコツ化するんですよ。仕事を勝手に放り出すわ、こうして他人に見られている事も気付かず本性曝け出すわ…」
余程あの男に振り回されているのだろう、彼女の言葉には恨みすら含まれていた。
これほどの美女が秘書をやっていて何か後ろ暗い関係にならないのかと無粋にも思ったが、この様子では彼女の方から願い下げなのだろう。