灰を被らないシンデレラ
「奥様の話題さえ出さなければ社長が機嫌を損ねる事はまず無いので、何を聞いていただいても大丈夫ですよ」
「…肝に銘じておきマス」
全くもって恐ろしい。
何がって、あの一宮社長をこれほどまでに手玉に取る臣永憂という女がだ。
あんな純真無垢なお姫様さながらのような面をして、こうして悉く周りを振り回すなんてもはや魔性…いやむしろ籍を置くべきはヴィランズの方だろ。
その後応接室へと戻ってきた社長とのインタビューは秘書のアドバイスに倣い憂の名前を出さずにいれば穏やかな雰囲気のまま終了し、撮影も無事に終える事ができた。
「お忙しい中ありがとうございました。VTRが完成次第、確認の為に一度データを送りますのでご確認をお願い致します」
「こちらこそ。我が社を選んでいただきありがとうございました」
王子様スマイルを貼り付けた一宮社長に見送られ、順番に応接室を後にする。