灰を被らないシンデレラ
ーーなんか、異様に疲れる撮影だったな…
そう思ったところで機材を運ぶ手伝いをしていたADがうっかりとよろけてしまい、社長の体にぶつかった。
「!?すすす、すみません!」
「構いませんよ、少し当たっただけですから」
そうは言うが、ぶつかった衝撃で彼が手にしていたタブレットが床に落ちてしまった。
顔を真っ青にして謝るADを安心させるように優しく言い聞かせながら、社長は自らしゃがんでタブレットに手を伸ばす。
その手が画面に触れた途端、センサーが反応して黒いディスプレイが明るくそれを映し出す。
そこには、見覚えしかない美しい女とそれに抱かれる小さな男の幼児、そして傍らで寄りかかる彼女によく似た面持ちの少女が笑顔で映っていた。