灰を被らないシンデレラ
「失礼」
一宮社長は何事も無かったかのようにそれを拾い上げ、にこりと笑う。
まるで見なかった事にしろとでも言いたげな顔だ。
こちらとてこの業界に入ってそこそこ経つ身だ。
それくらいの顔色は読めるようになってきた。
「ではまた、機会がありましたら是非よろしくお願いします」
「あ、はい…」
お互いに頭を下げ、その場を後にした。
総務課長に玄関まで見送られ会社を出るや否や、緊張感が解けたようにスタッフ達が各々好き勝手に話しだした。