灰を被らないシンデレラ
「丁度お昼なんで、何処かで食べて帰りません?」
「あー…すみません。僕はちょっと遠慮しておきます」
スタッフの誰かが機材を車に入れながらそう言ったが、自分は断った。
なんだか今は胃に何も入る気がしなかった。
このまま局に戻ると告げて、1人集団を離れて歩き出す。
先程の待受の写真、チラリとしか見えなかったが憂は母になっても相変わらず美しいままだった。
思い出す彼女の顔はいつも暗く、不機嫌そうにしているか無表情ばかりだが、先程の弾けんばかりの輝かしいあの笑顔を見るに今はきっと、とても幸せなのだろう。
「あーあ…俺も彼女欲しー」
誰も居ない小道を1人歩きながら、俺はモテない男の常套句のような台詞を吐いたのだった。