灰を被らないシンデレラ
遭逢
何度も読んだお決まりの台詞をうんざりしながらも読み終え、憂はパタンと絵本を閉じた。
本のタイトルはシンデレラ。
表紙には青いドレスを着た美女が描かれている。
「ハイおしまい。約束だよ、もういい加減に寝なさい」
おざなりに絵本を寝台の隣のローテーブルに置けば、自分にくっついていた小さな少年が「はーい」と声変わりのしていない高い声で素直に頷いた。
「ねーちゃん」
「何?」
自分を姉と呼ぶのは弟の黎。
年が15も離れた姉弟で、それだけ離れているとどちらかというと感覚は息子に近い。
「おれ、この話すきだ」
どうにも気性の穏やかなこの弟は、昔から外を駆け回って遊んだりするよりは家で静かに本を読むのを好む性格で、好きなものも車や恐竜などのカッコイイものよりキラキラとした可愛いものの方が多かった。
だからいつも寝る前に読まされる本は大体お姫様が出てくる話が多い。