灰を被らないシンデレラ

結婚生活




一宮柊、30歳。

彼が経営する会社ーーgalleryは日本を拠点にしたインターネット企業であり、大衆向けのECサービスの運営を主としている。

元々は日用品をメインとした通信販売サイトだったが、その驚くほどの簡単な操作性と最新のAI技術による細やかな顧客サービスによって、現代の忙しい社会人や目ざましい技術の発展に引け目を感じていた層から絶大な支持を受け、更に実用性に富みながらも質の良い洗練されたデザインが人気のプライベートブランドの立ち上げがそれに拍車をかけた。

今やgalleryは創業10年にして他に追随を許さないほどの規模に成長した。

そしてこの度、ファッション雑貨にもその幅を広げるとのことで、先駆けの一つとして選ばれたのが憂の父が経営する会社だった。



一方憂の父親が代表を務める臣永商事は、衣類や服飾雑貨をメインとした製品の企画から製造を始めとし、独自の流通ネットワークにより販売まで担う会社だ。
その他にも色々とあるらしいが大嫌いな親の会社の事など知ったことでは無い。

一条柊が目をつけたのは須臣商事のオリジナルアパレルブランドの『Umne』だ。

元々は憂の祖母である臣永周(とみながあまね)が立ち上げたファッションブランドだったが、後継となる父にはデザイナーとしての才能は無かった。
しかし父には経営者としての資質はあったため商社を立ち上げUmneを取り込み、新たなデザイナーを起用して今もなお人気のブランドとして定着させている。








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