灰を被らないシンデレラ



結婚するに当たって柊から出された条件は一つ。

自分と黎を除く他の人間とは2人きりにはならない事。
それさえ守れば好きにして良いとの事だった。

何故黎だけが例外なのかというと、勿論弟という理由もあるが、家を出る際にこれでもかと瞳に涙を溜めて縋り付いて行かないでと泣かれ、その姿に流石の暴君も思う事があったのだろう。

週に一回、憂を自宅に返し姉弟の時間を設けると男の約束を交わしていた。


後ろ髪引かれる思いはあったが、元よりシンデレラの話が好きな少年だ。

柊の物語の王子様さながらの容貌にすっかり絆され、ちゃっかり賄賂まで受け取って謎の信頼関係を築いていた。解せぬ。


それに黎は自分と違い、彼の母親である義母にはきちんと愛されている。


だから憂が幼少期に感じていたような寂しさを感じる事はないだろうと思うと、少しは安心する事ができた。








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