灰を被らないシンデレラ



さて、不本意ながら始まった結婚生活は基本毎日が同じルーティンだ。

事業主である柊に決まった休みは無く、不定期に休日が入る。
一方で憂はまだ大学生なので平日の昼間は講義の為大学へ赴く。

家事は基本的には時間に余裕のある憂の仕事だ。
花嫁教育として諸々叩き込まれた事によりひと通り何でもこなせる為、不便は無い。

ただ困るのが、柊が家にいるといちいちちょっかいをかけてくるので思うように進まないという事だ。


「憂、メシ」


柊の二重人格はもはや感服するほどで、一歩家に入れば途端に亭主関白のように振る舞う。

しかし憂もただ従順なだけの女ではない。
ベランダに出て洗濯物を干していた手を止め、不満気に眉を寄せる。


「今何してるか見えない?ちょっと待って」


そう吐き捨てふいと背を向ければ、同じくベランダに出てきた柊にむんずと胸を掴まれた。


「わっ!」
「色気のねー声」


鼻で笑われながら言われた言葉にカチンときて、胸を鷲掴みにする腕を強く握った。













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