灰を被らないシンデレラ




「柊さん、和食と洋食どっちが良い?」
「和」


ベランダのドアを閉めながら入ってくる夫に尋ねれば短い返答だけが返ってきた。

柊の返事を聞き米を炊飯器に入れ早炊きでセットし、冷蔵庫の魚を焼きながら味噌汁の為の野菜を切る。

因みに出汁は顆粒ではなく鰹節からとる。
顆粒でも文句を言われたことはないが一度出汁をきちんと取った味噌汁を出した時に「お、」と少し目を輝かせていたのを見て以降、そうするようにしている。

どうやらこれまで柊は食生活がかなりおざなりだったらしい。
最初にはっきりと料理は出来ないと宣言され、憂も別に嫌いではなかったので自然と食事の支度だけは憂の仕事と決まった。

この人はほんと何食べて生活してたんだと思うほど何を出しても美味しそうに食べるので、義務に感じていた料理が最近では少し好きになってきていた。




< 26 / 181 >

この作品をシェア

pagetop