灰を被らないシンデレラ
「どうして?」
布団に入り顔だけを出した弟の頭を撫でながら憂は尋ねる。
「だってねーちゃんに似てるから」
「似てる…かな?」
「うん。きれいで優しいところとか」
疑うことを知らない綺麗な目で言われ、黎の頭を撫でていた手がピタリと止まる。
この幼い弟は知らない。
その与えられる優しさが打算であり、造られたモノだということを。
「…それは嬉しいな。じゃあ、もう電気消すよ」
「ん。おやすみ…」
既に微睡の中にいるような声を聞き、憂はベッドの脇につけられた小さな電球の明かりを消した。
真っ暗な闇の中を足音が鳴らないよう静かに歩き、そっと扉を開けて部屋を出た。
廊下に出た瞬間、彼女はそれまで浮かべていた柔らかな表情を一変させ、能面のような無表情へと変えた。