灰を被らないシンデレラ



これは契約、只の雇用契約だ。

弟の面倒を見ることが契約などとおかしな話だが、物事には必ず原因がある。


まず大前提に、黎とは血が繋がっていない。
訂正。正確には半分は同じ血が流れている。

母親の違う義理の姉弟だ。




事の発端は3年前、憂が17歳の時だ。

当時高校生だった憂はいつものようにつるんでいた仲間達と夜中まで遊び呆けて明け方になって帰宅すると、般若のような顔をした父親に捕まり執務室まで連行され告げられた。


「いい加減、臣永(とみなが)の人間としての自覚を持て」


咄嗟にどの口が、と思った。

臣永家の長女として生を受けた憂は、文字通りお姫様になるために育てられてきた。
言葉を選ばずに言えば、政略結婚の道具として、だ。

厳しい礼儀作法の教育、将来夫を支えるための勉学の知識や家事全般。
果ては確実に子を成せる身体にするため食事だけでなく月ものの管理まで徹底される始末。

しかもそれらは全て、自分の両親でなく家政婦やそれ専用に雇った教師達に押し付けられていた。






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