灰を被らないシンデレラ



訳アリの政略結婚なんでとは言えず、適当に苦笑いで返していると同じように締めの作業をしていたこちらも同じく大学生の先輩女性が話に入ってきた。


「でもその旦那さん賢明だと思う。その指輪相当役に立ってるよ」
「どうして?」


この2人はどうやら同じ大学の友人らしく、何かとよく一緒にいる所を見かける。


「バイトの男子もそうだけど、偶にお客さんからも臣永さんの事聞かれるよ。今日はあの人いないんですかって。気持ち悪いから適当に流してるけど」
「うへえ…確かに気味悪いわ」
「一回ガチのヤンキーみたいなのに聞かれた時は怖かったけど、意外とあっさり引き下がってくれてホッとしたよ」
「怖っ!臣永さん気をつけた方がいいよ〜夜道とか大丈夫?」
「今のところは。防犯グッズも持ってますし」


閉店が20時なのでそれほど遅いというわけではないし、それこそ少し前までは夜中まで遊びまわっていたので変な輩に絡まれるのはそれこそ日常茶飯事だった。
それなりに対策は心得ている。

今の大和撫子を装った姿では憂が昔元ヤンだった事など誰も想像はしていないだろうが。


バイト仲間の言うヤンキーみたいな男というのが少し引っ掛かるが、自分ならどうとでもなるだろうとたかを括っていた。



その数日後にその男が現れるまでは。







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