灰を被らないシンデレラ
そしてその夜、市塚から連絡があったであろう柊がいつもより早く帰宅したかと思えばすぐに凶悪面で説明しろと詰め寄られた。
「なんつー男に目ェつけられてんだお前は」
一通り説明した後、柊はこれでもかと眉間に皺を寄せて憂を睨んだ。
「大抵はああ言って凄んだら諦めてくれるんだけどね…。それにあれ以来夜出歩くこと無かったからここまで執着されてるとは思わなかったんだよ」
「しっかりストーカー化してんじゃねえか」
「それはごめんなさい。でもどうしてバレたんだろう…」
あの男が身を置くような場所や関係はもう断ち切っている。
元々友人と言えるようなものも1人だって作らなかったので、知り合いを介してなんて事も無いはずだ。
「それについては心当たりがある」
そうして見せてきたのはSNS。
そこには接客する憂の写真が勝手に載せられていた。
その下には憂が柊の妻であること、そしてかつては元ヤンで繁華街を遊び回っていたことがありありと書かれていた。
「所謂特定犯ってやつだ。なんでお前が狙われたかは知らねえが、その男はコレ見たんだろ」
「これ…、こんなの出回って柊さんは大丈夫なの?」
「別に。アカウントは既に凍結させたし、SNSなんてのは元よりデマばっかだろ。確たる証拠もねえし。実際コメント欄見ても信じてる奴なんざほぼ居ねえぞ。…つーかそれより美人すぎる定員とかコメント残してるやつのが問題だわ」