灰を被らないシンデレラ
その時両親は何をしていたかと言えば、父は会社を大きくする事だけに目を向けており、母は外で好き放題に男を作り完全な仮面夫婦だった。
流石におかしいと目が覚めたのは14歳の春、母が不倫の末に蒸発した時だ。
その時だって父は憂の傷付いた心を慰める訳でもなく淡々と離婚について告げただけだった。
以降、憂は事あるごとに反発し、教師達を泣かせ辞職まで追い込み、素行の良くない者たちとつるみ父親の金で夜な夜な遊び呆けるようになった。
警察に補導された時でさえ、秘書に全てを任せて父は迎えにすら来なかった。
そのくせに何を今更と毒づくも、誰の金で自由に出来ていたかと脅されてしまえば悔しい事に黙るしか無かった。
しかしその次に放たれた言葉は更に父親への嫌悪感を増幅させた。
曰く、父親は既に再婚して2歳になる子供までいるのだと。
それが義理の弟である黎だ。
どこまで自分をコケにすれば気が済むのかと怒鳴り散らしたが、父は一切取り合わなかった。
代わりに押し付けられたのが、黎の世話だった。