灰を被らないシンデレラ
時刻は23時過ぎ。
帰るなり柊は憂を抱き上げて寝室へと直行し憂を抱いたままベッドに倒れ込んだ。
そして今、抱き寄せられた状態で上から自分の名前を呼ぶ柊の声に応えるため顔を上げた。
「なに?柊さん」
「お前なんであの時抵抗しなかった?」
「あの時ってどの時?」
耕介に押し倒された時の事を言っているのなら全力でこれ以上無いほどに抵抗したのだが、実際に見ていないから知らないのも仕方ない。
「俺と初めてバーで会った時だ。…あん時お前、さして抵抗しなかっただろ」
「ああ…」
「初めてだって言ってたよな。実際処女だったが…好きでもない男にあんな事されて嫌じゃ無かったんか」
柊の言葉に顔を上げ、目をぱちくりさせた。
その表情を見た柊は不満げに眉を寄せる。
「…なんだよ」
「いや、一応は気にしてたんだなって今びっくりしてる」
「るっせ」
短く吐き捨て、柊は抱き締める腕の力を更に強める。