灰を被らないシンデレラ
閑話
自分の腕の中で眠る愛しい寝顔を見ながら、柊は過去の出来事を思い浮かべていた。
その時、柊はひどく苛ついていた。
その日は自身の会社であるgalleryの10周年を記念するパーティーがあり、先程まで柊はそのパーティー会場で完璧な猫をかぶっていた。
「クッソあの狸ジジイどもが…」
伊達眼鏡を外し、整えられた髪をガシガシと掻きむしる。
「やれ品性に欠けるだの言葉遣いには気をつけろだの、うるっせェんだよ」
柊は元々育ちが良いと言えるような家庭で育ってきていない。
父親が誰かもわからぬシングル家庭で、母は外見は美しいが粗野で奔放で、根性だけで生きているような女だった。
それ故に柊もハングリー精神だけでここまでのし上がってきた。
偶々その分野に強く才能に恵まれ、運にも味方されここまできたが、未だこのお上品ぶった集まりだけは好きになれない。
それでも出資者は大事に扱わねばならないので非常に不愉快だが何を言われても表面上はありがたいと言って聞き流すが、内側では常に沸々と怒りの感情が煮えたぎっていた。
最近ではそれに加えていい加減女遊びを辞めてそろそろキチンとした伴侶を決めろと人の女関係にまで口を出してきやがる。
うるせえ、ほっとけ。
自分から寄ってきて勝手に股開く女を相手にして何が悪いんだ。