灰を被らないシンデレラ
ポカンとその一部始終を眺めていた柊だったが、次第に込み上げてくる感情に思わず口元を手で押さえた。
「マジかよあの女」
これほど鮮烈な光景を目にしたのは始めてだった。
気付かぬうちに口角が上がり、失われていた興味がモデルのように美しく歩み去る女の後ろ姿一点に集中する。
同じ穴の狢のいう奴なのだろう。
どうせ結婚するならあんな女がいい。
見栄えが良くて強かな女。
自分の力で邪魔な虫を蹴散らせる強い女。
あの女を屈服させる事ができたらどれほどの快感を得られるだろう。
そう思ったら最後、柊は止まらなかった。
直ぐに彼女の素性を調べ上げ、丁度会社間で結ばれようとしていた契約を利用して婚約へと持ち込んだ。