灰を被らないシンデレラ
「あの…さ、怒らせちゃったらごめんなんだけど…」
香里は表情を曇らせ、言いにくそうに続ける。
「実は憂じゃなくて…旦那さんが原因だったりしない?」
「…え?」
「私が憂は恨みを買うような子じゃ無いって思ってるからかも知れないけど、なんとなくそんな気がして」
「……」
「多分だけど、今回実際被害に遭った事で憂の周りは調べられてると思うんだよね。それでも犯人が誰かわからないって事は、そもそもの憂じゃ無いのかなって…」
そこまで言って、香里はハッとした顔をした。
「ごめん!私の考えすぎだね。ミステリー小説が好きだからつい…」
「ううん。心配してくれたんだよね、気にして無いから大丈夫だよ」
ありがとうと笑って見せれば、香里は少し安心した顔を見せてくれた。
口ではそう言ってはみたものの、憂の体には緊張が走っていた。
考えたくはないけれど、香里の考えが全くの的外れとは思えなかった。
けれどこんな事柊に言えるはずがない。
ただでさえ忙しい彼にこれ以上の負担はかけられない。
自分が気にしさえしなければ良い話なのだ。
それからも頭の中で不安がぐるぐると渦巻きながらも、何もない風を装って残りの片付けを終わらせていった。