灰を被らないシンデレラ



沙里奈だ。


どうしてここにと思い咄嗟に身を隠した。

沙里奈は誰かを待っているようで中に入る様子はない。
気になってそこから動けずそれから少ししてマンション内から出てきた姿は、信じたくないものだった。


「ひ、いらぎさ…」


柊は真っ直ぐ沙里奈に向かって歩いて対面する。そして彼女から何かを受け取った。

時計だ。
いつも柊が会社に付けていっているブランド物。



ーーどうしてあの人が持ってるの?


そう思った瞬間、二人が重なった。
沙里奈が柊の胸に寄りかかっていた。


「っ、」


息が出来なくなり、窒息しそうになった。


二人はすぐに離れて柊は早々にマンション内へ戻ったが、今見た光景は見間違いなどではなかった。


その後すぐに沙里奈もマンションから離れて去って行った。

それだというのに憂の足は一向に動けず、ただただその場に立ち尽くしていた。






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