灰を被らないシンデレラ




柊の様子は何も変わらなかった。
昼の逢瀬を見られたとは夢にも思っていないのだろう。

憂もできるだけ平静を装った。

けれど何か会話した記憶はあるのにどれも朧げで何も思い出せない。


結局料理も未だ暑い日が続く中、日光の真下に長時間いたせいでいくつか食材を駄目にしてしまい結局簡単なものしか作れなかった。


ぐるぐると昼間の二人の光景が頭の中で渦巻いては無理矢理消すことを繰り返し、そうしているうちに日が落ちていった。


順番に入浴を済ませ、先に風呂を終えていた憂はリビングで柊を待っていた。

そして柊がリビングに入ってきたのを確認するとゆっくりと振り返って立ち上がり、その体に抱きついた。


「…憂?」


柊の戸惑う声が聞こえる。

けれど今はそれすらもどうでも良かった。


憂は抱き締める力を強め、静かに言った。


「柊さん……シよ?」





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