ヤンキー高校のアリス
六月は雨 【side 足立】
「何」
体育館裏に呼び出された千住は、ポケットに手を突っ込んだまま、剣呑な目つきの足立を迎え撃った。
「何がそんなに気に食わないわけ」
足立が重苦しそうに口を開く。
「ありすに手を出したか?」
「出したよ、好きだから」
次の瞬間、足立の手が千住の胸ぐらをつかんだ。にらみ合う瞳の奥に確かに嫉妬の炎がともっているのを、千住は見て取った。
「なにかいけない? こういったことは先手必勝だし、そうじゃないんなら言わない方が悪くない?」
淡々と。
淡々と言いつのる千住に、足立は苦しそうに告げた。
「……オレはありすを守るためだけに生きてる」
「ああ、そう」
「オレは二度とあいつを泣かさないために生きてる!」
言葉の端々から伝わってくる「それ」に、気づかない千住ではない。
「ひょっとして、知り合い?」
「……ありすは、なにも覚えてないけど」
足立は絞り出すようにつぶやき、胸ぐらをつかんだ手を離した。
「それでも、オレの一番はありすだ。だからオマエが……オマエが、本当にありすを守れるか、ここで見せてみろ」
「ああ、そういう……【ヤンキー道】ってやつ?」
千住はポケットから手を出して緩く握った。ファイティング・ポーズを見せた千住に、足立は高らかに言い放った。
「ちげえよ。オマエの『好きな女』に対する思いを見せてみろって言ってんだ!」
「……父親かよ」
その言葉が合図になった。ふたりは拳を振りかぶった。
体育館裏に呼び出された千住は、ポケットに手を突っ込んだまま、剣呑な目つきの足立を迎え撃った。
「何がそんなに気に食わないわけ」
足立が重苦しそうに口を開く。
「ありすに手を出したか?」
「出したよ、好きだから」
次の瞬間、足立の手が千住の胸ぐらをつかんだ。にらみ合う瞳の奥に確かに嫉妬の炎がともっているのを、千住は見て取った。
「なにかいけない? こういったことは先手必勝だし、そうじゃないんなら言わない方が悪くない?」
淡々と。
淡々と言いつのる千住に、足立は苦しそうに告げた。
「……オレはありすを守るためだけに生きてる」
「ああ、そう」
「オレは二度とあいつを泣かさないために生きてる!」
言葉の端々から伝わってくる「それ」に、気づかない千住ではない。
「ひょっとして、知り合い?」
「……ありすは、なにも覚えてないけど」
足立は絞り出すようにつぶやき、胸ぐらをつかんだ手を離した。
「それでも、オレの一番はありすだ。だからオマエが……オマエが、本当にありすを守れるか、ここで見せてみろ」
「ああ、そういう……【ヤンキー道】ってやつ?」
千住はポケットから手を出して緩く握った。ファイティング・ポーズを見せた千住に、足立は高らかに言い放った。
「ちげえよ。オマエの『好きな女』に対する思いを見せてみろって言ってんだ!」
「……父親かよ」
その言葉が合図になった。ふたりは拳を振りかぶった。