《マンガシナリオ》キミだけに、この溺愛を捧ぐ
第1話
◯(回想)学校、保健室
保健室の白いベッドの上で、ヒーローの有島流星に押し倒されるヒロインの大庭真琴。
キスをされそうな至近距離に、戸惑いながらも顔を赤くする真琴。
そんな真琴を上から見つめる流星。
流星も頬を赤く染める。
真琴(…な、なにこの展開。なんでわたしが、有島くんとこんなことに…?)
(回想終了)
◯学校、渡り廊下(朝礼前)
9月、2学期に入って10日ほどが経過。
親友の河合あずみと話しながら渡り廊下を歩く高校2年生の真琴。
その前に、1つ年下の女子生徒たちがやってくる。
その真ん中の1人が、両隣にいる女子生徒に肩を叩かれ励まされながら真琴に歩み寄る。
キョトンとする真琴。
女子生徒「まっ…、真琴先輩…!」
真琴「は、はい?」
すると、突然真琴は女子生徒に手紙を押し付けられる。
女子生徒「入学してすぐに、先輩に一目惚れしました!これ、私の気持ちです…!読んでください!返事はいりません!」
とっさのことで思わず手紙を受け取ってしまう真琴。
女子生徒は頬を赤く染め、他の女子生徒たちといっしょにそのまま走って逃げてしまう。
その後ろ姿をぽかんとして見つめる真琴。
あずみ「もしかして、…ラブレター?」
真琴「そう…みたいだね」
もらったラブレターを見つめ、苦笑いを浮かべる真琴とあずみ。
あずみ「ラブレター渡してきたコは初めてだね」
真琴「う…うん」
あずみ「真琴モテすぎでしょ。もう何人目?」
真琴「そんなの数えてないからわからないよ〜…。それに、同性からモテても…」
あずみ「嫌われるよりはいいじゃん」
真琴「それはそうなんだけどぉ…」
あずみに励まされるも、困り顔の真琴。
――大庭真琴。
身長170センチの長身で、モデルのように手脚が長くスラッとした体型。
髪型はクールなショートボブ。
3人の兄がいて男の子のように育てられ、華奢な見た目とは裏腹にそのあたりの男子よりも腕っぷしは強い。
兄からお下がりで、高校の制服もスカートではなくズボン。
真琴の通う高校は、性別関係なくズボンかスカートを選ぶことはできるが、ズボンをはいている女子は真琴だけ。
性格もサバサバしていてクールで、『マコト』という名前や見た目からしても昔からよく男の子と間違われてきた。
そんな男勝りな真琴には一部のファンがつき、中学のときもたまに女子から告白されることもあった。
高校ではズボンスタイルの制服がさらに似合っていて男子に見られがちで、高校でもたびたびこうして同性から告白されていた。
教室に向かって、再び渡り廊下を歩きだす真琴とあずみ。
あずみ「とくに年下から人気だよね。真琴、運動神経もいいから目立っちゃうし。なんでもこなせるクールでかっこいい先輩!ってイメージなんだろうね」
真琴「…う〜ん。ありがたいけど、女子からは同性として見てもらいたいな」
ため息をつく真琴。
真琴(『かっこいい!』と言われたり、同性から告白されるたびにいつも思ってしまう。わたしって、そんなに女の子っぽく見えないのかな…と)
視線を落とし、寂しそうな表情の真琴。
◯(回想)真琴のこれまで
真琴(待望の女の子というよりは、兄貴たち同様に男の子のようにして育てられた)
兄たちのお下がりの男の子の服を着て、幼少期の兄たちとおもちゃを取り合ったり、兄弟4人でいっしょにお風呂に入ったり。
真琴(頻繁に美容院に行く手間が省けるようにと、髪型もできる限りショートに切ってもらった)
美容院で、兄たちと同じようなボーイッシュな髪型に切ってもらう真琴。
真琴(服も兄貴からのお下がりで、小さいときからよく男の子に間違えられていた)
小学生時代の真琴、男友達と虫取りや木登りをして遊ぶ。
真琴(それまでわたしもとくに気にすることなく兄貴のお下がりの服を着て、日が暮れるまで男友達と遊んで、一時は自分は男の子なんじゃないだろうかさえ思い始めていたけど――)
小学校の教室で、キラキラのヘアアクセでおしゃれを楽しむクラスメイトの女の子たち。
その様子を遠くのほうからうらやましそうに見つめる真琴。
真琴(小学生高学年になって、徐々に女の子っぽいものに興味を持つようになった)
おもちゃ売り場でかわいいプリンセスのなりきりセットを見つめるが、親に言うのが恥ずかしくほしいと言い出せない小学生の真琴。
真琴(どうしても女の子っぽくなりたくて、一度クラスメイトの女の子に髪をくくってもらったことがあった)
クラスメイトの女子にお願いして、短い髪をなんとか結んでもらう真琴。
初めてのツインテールに、キラキラのヘアアクセをしてもらい、鏡を見た真琴は目を輝かせる。
しかし――。
クラスメイトの女子たち『なんかいつもと雰囲気違って変だね』
クラスメイトの女子たち『真琴ちゃんって女の子っぽいものよりも、やっぱり男の子っぽいほうが似合うね』
その言葉に内心ショックを受ける真琴。
しかし、笑ってやり過ごす。
クラスメイトの女子たちが去ったあと、解いた髪を寂しそうになでる真琴。
そこへ、小学生のあずみが声をかけにやってくる。
真琴(本当は女の子っぽいものが好き。でもわたしにはかわいいものは似合わないし、スカートをはいたら笑われてしまう…)
中学の制服でスカートをはく真琴。
しかし、周りからは似合わないと笑われてしまう。
落ち込む真琴を励ます中学生のあずみ。
真琴(でも、あずみだけがわたしの本当の気持ちを知ってくれている)
高校に入学し、制服のズボンをはきネクタイを締める真琴。
真琴(高校の制服も中学同様にスカートだと笑われるから、兄貴のお下がりでいいと言ってズボンにした。きっとお母さんやお父さんも、わたしはスカートには興味がないと思っている)
高校に入り、男子生徒だと思い声をかけてきた同級生たちに対して、女だと説明する真琴。
それを聞いて周りは驚く。
真琴(わたしはこれまで自分の本音を押し殺してきた。一度でいいから『かわいい』と言われたいのに、『かっこいい』と褒められても正直複雑。だけど、今さら本当は女の子として見てもらいたいなんて言えるわけないし…)
小学生のときに変と言われたり、中学生のときの制服のスカート姿に笑われたことを思い返す真琴。
真琴(それに、もうあんな思いはしたくない。うらやましがられたりもするけど、…こんなボーイッシュな自分がコンプレックスだ)
(回想終了)
〇回想前の続き、学校、階段(朝礼前)
階段を上る真琴とあずみ。
その2人を追い越すようにして、下からだれかが階段を駆け上がってくる。
その人物が真琴に気づく。
太樹「おっ、真琴じゃん」
真琴「たっちゃん!」
1つ年上の幼なじみの太樹だとわかり、少し頬を赤くする真琴。
――丹羽太樹。
身長180センチの爽やかな茶髪の短髪。
真琴(たいちゃんはわたしの幼なじみで、唯一家族以外でわたしが見上げることのできる男性)
柔らかく微笑む太樹。
太樹「おはよう。あずみちゃんもおはよう」
あずみ「おはようございます〜」
真琴「おはよう。今きたところ?」
太樹「ううん、サッカー部の朝練終わったとこ」
真琴「そうなんだ。大会近いって言ってたもんね」
太樹「ああ。キャプテンになって初めての大会だからな。気合い入れないと」
真琴「そっか。がんばってね」
太樹「おう!」
爽やかな笑顔を見せて、3年の教室へと向かう太樹。
その後ろ姿をぽっと頬を赤く染めて見つめる真琴。
あずみ「相変わらず、太樹先輩かっこいいよね〜」
真琴「…うんっ」
あずみ「何度も言ってるけど、そんなに好きならさっさと告っちゃえばいいのに」
真琴「む、無理無理…!」
顔を真っ赤にして、両手を顔の前でブンブンと振る真琴。
真琴(だって、たっちゃんはわたしのことを妹のように――ううん、弟のようにしか思っていない。告白しても結果なんてわかりきってるのに、…そんな勇気わたしにはないよ)
〇前述の続き、学校、教室(朝礼前)
あずみ「おはよ〜!」
真琴「おはよう」
クラスメイトの女子たち「「おはよう!あずみ、真琴ちゃん」」
自分の席に着こうとする真琴。
そんな真琴を後ろからクラスメイトの男子が肩を組んでくる。
クラスメイトの男子たち「おっはよー、真琴!くるの遅ぇぞ!」
真琴「ごめんごめん。途中で忘れ物したのに気がついて」
クラスメイトの男子たち「それよりもさ、真琴。昨日のボクシング見た?」
真琴「あ〜、うん。兄貴たちが見てたから」
クラスメイトの男子たち「やべーよな!最後の!まさかあそこでノックアウトとはな!」
真琴「だねー。わたしも興奮しちゃった」
クラスメイトの男子グループに囲まれ、楽しそうに話す真琴。
真琴(見てわかるように、男子もわたしを女として認識していない。バカ話で盛り上がって楽しかったりもするけど、一切女として見られていないことがやっぱりどこか切なかったり)
クラスの男友達と笑い合う真琴を見て、一部のクラスメイトの女子たちは眉を潜めてひそひそ話をする。
〇前述の続き、学校、教室(朝礼)
担任が教卓の前に立ち、いろいろと伝達事項をクラスに伝える。
その話をぼうっとしながら聞く真琴。
担任「――ということで、今日は新しいクラスメイトを紹介します」
それを聞き、驚いて目を見開ける真琴。
周りのクラスメイトたちも転校生がくると聞いて騒ぎ出す。
クラスメイトの男子たち「おい、真琴!男子か女子どっちだと思う?」
斜め前の席の男子が真琴のほうを振り返る。
真琴「さ〜、どっちだろうね」
クラスメイトの男子たち「そりゃもちろん女子がいいに決まってるよな!美女こいっ!」
顔の前で手を合わせるクラスメイトの男子。
それを見て、苦笑いを浮かべる真琴。
真琴(…あの、わたしも一応女子なんだけど。絶対今の発言、わたしが女子って忘れてたよね?まあ、そんなこともうどっちでもいいんだけど)
小さなため息をつく真琴。
担任「それでは入ってきてください」
担任がそう言うと、教室の前のドアが開く。
真琴(自分でも女子として見られない今の立場を理解してるし、今さら期待もしていない。だから、わたしを女の子扱いしてくれるような人は現れない。そう思っていたのに――)
ドアが開き、転校生が入ってくる。
ひと目で長身とわかるスタイルのよさに、明るい髪色のマッシュヘアが特徴的。
その姿を見て、またざわつく教室内。
担任「有島流星くんだ」
流星「有島です。よろしくお願いします」
ペコッと頭を下げる流星。
真琴は顔を上げた流星と目が合う。
真琴(うわっ、きれいな顔立ち…)
心の中でつぶやく真琴。
流星も真琴と目が合い、驚いたように目を見開く。
流星のかっこよさにクラスメイトの女子たちは興奮している。
担任「有島の席は〜…。そうだな、大庭の隣が空いてるからそこに座ってくれ」
真琴「…えっ!?」
とっさに自分の席の隣の空席に目をやる真琴。
ゆっくりと歩み寄ってくる転校生の流星にドキドキする真琴。
真琴の隣に流星が座る。
流星「よろしくね」
真琴「よ…よろしく」
緊張で声が上ずり、うつむく真琴。
そんな真琴を見て、くすっと笑う流星。
流星「なんかかわい」
真琴「へっ!?…か、“かわいい”!?」
流星「だって、てっきり無視されるのかと思ったから反応が初々しくって。隣がやさしそうな女の子でよかったー」
真琴「お…女の子……」
呆然とする真琴。
真琴(初対面の人には絶対に男子と見間違われるのに、有島くんは間違わなかった)
ドキドキしながら困惑する真琴。
真琴(…それに“かわいい”なんて言葉、生まれて初めて言われた)
保健室の白いベッドの上で、ヒーローの有島流星に押し倒されるヒロインの大庭真琴。
キスをされそうな至近距離に、戸惑いながらも顔を赤くする真琴。
そんな真琴を上から見つめる流星。
流星も頬を赤く染める。
真琴(…な、なにこの展開。なんでわたしが、有島くんとこんなことに…?)
(回想終了)
◯学校、渡り廊下(朝礼前)
9月、2学期に入って10日ほどが経過。
親友の河合あずみと話しながら渡り廊下を歩く高校2年生の真琴。
その前に、1つ年下の女子生徒たちがやってくる。
その真ん中の1人が、両隣にいる女子生徒に肩を叩かれ励まされながら真琴に歩み寄る。
キョトンとする真琴。
女子生徒「まっ…、真琴先輩…!」
真琴「は、はい?」
すると、突然真琴は女子生徒に手紙を押し付けられる。
女子生徒「入学してすぐに、先輩に一目惚れしました!これ、私の気持ちです…!読んでください!返事はいりません!」
とっさのことで思わず手紙を受け取ってしまう真琴。
女子生徒は頬を赤く染め、他の女子生徒たちといっしょにそのまま走って逃げてしまう。
その後ろ姿をぽかんとして見つめる真琴。
あずみ「もしかして、…ラブレター?」
真琴「そう…みたいだね」
もらったラブレターを見つめ、苦笑いを浮かべる真琴とあずみ。
あずみ「ラブレター渡してきたコは初めてだね」
真琴「う…うん」
あずみ「真琴モテすぎでしょ。もう何人目?」
真琴「そんなの数えてないからわからないよ〜…。それに、同性からモテても…」
あずみ「嫌われるよりはいいじゃん」
真琴「それはそうなんだけどぉ…」
あずみに励まされるも、困り顔の真琴。
――大庭真琴。
身長170センチの長身で、モデルのように手脚が長くスラッとした体型。
髪型はクールなショートボブ。
3人の兄がいて男の子のように育てられ、華奢な見た目とは裏腹にそのあたりの男子よりも腕っぷしは強い。
兄からお下がりで、高校の制服もスカートではなくズボン。
真琴の通う高校は、性別関係なくズボンかスカートを選ぶことはできるが、ズボンをはいている女子は真琴だけ。
性格もサバサバしていてクールで、『マコト』という名前や見た目からしても昔からよく男の子と間違われてきた。
そんな男勝りな真琴には一部のファンがつき、中学のときもたまに女子から告白されることもあった。
高校ではズボンスタイルの制服がさらに似合っていて男子に見られがちで、高校でもたびたびこうして同性から告白されていた。
教室に向かって、再び渡り廊下を歩きだす真琴とあずみ。
あずみ「とくに年下から人気だよね。真琴、運動神経もいいから目立っちゃうし。なんでもこなせるクールでかっこいい先輩!ってイメージなんだろうね」
真琴「…う〜ん。ありがたいけど、女子からは同性として見てもらいたいな」
ため息をつく真琴。
真琴(『かっこいい!』と言われたり、同性から告白されるたびにいつも思ってしまう。わたしって、そんなに女の子っぽく見えないのかな…と)
視線を落とし、寂しそうな表情の真琴。
◯(回想)真琴のこれまで
真琴(待望の女の子というよりは、兄貴たち同様に男の子のようにして育てられた)
兄たちのお下がりの男の子の服を着て、幼少期の兄たちとおもちゃを取り合ったり、兄弟4人でいっしょにお風呂に入ったり。
真琴(頻繁に美容院に行く手間が省けるようにと、髪型もできる限りショートに切ってもらった)
美容院で、兄たちと同じようなボーイッシュな髪型に切ってもらう真琴。
真琴(服も兄貴からのお下がりで、小さいときからよく男の子に間違えられていた)
小学生時代の真琴、男友達と虫取りや木登りをして遊ぶ。
真琴(それまでわたしもとくに気にすることなく兄貴のお下がりの服を着て、日が暮れるまで男友達と遊んで、一時は自分は男の子なんじゃないだろうかさえ思い始めていたけど――)
小学校の教室で、キラキラのヘアアクセでおしゃれを楽しむクラスメイトの女の子たち。
その様子を遠くのほうからうらやましそうに見つめる真琴。
真琴(小学生高学年になって、徐々に女の子っぽいものに興味を持つようになった)
おもちゃ売り場でかわいいプリンセスのなりきりセットを見つめるが、親に言うのが恥ずかしくほしいと言い出せない小学生の真琴。
真琴(どうしても女の子っぽくなりたくて、一度クラスメイトの女の子に髪をくくってもらったことがあった)
クラスメイトの女子にお願いして、短い髪をなんとか結んでもらう真琴。
初めてのツインテールに、キラキラのヘアアクセをしてもらい、鏡を見た真琴は目を輝かせる。
しかし――。
クラスメイトの女子たち『なんかいつもと雰囲気違って変だね』
クラスメイトの女子たち『真琴ちゃんって女の子っぽいものよりも、やっぱり男の子っぽいほうが似合うね』
その言葉に内心ショックを受ける真琴。
しかし、笑ってやり過ごす。
クラスメイトの女子たちが去ったあと、解いた髪を寂しそうになでる真琴。
そこへ、小学生のあずみが声をかけにやってくる。
真琴(本当は女の子っぽいものが好き。でもわたしにはかわいいものは似合わないし、スカートをはいたら笑われてしまう…)
中学の制服でスカートをはく真琴。
しかし、周りからは似合わないと笑われてしまう。
落ち込む真琴を励ます中学生のあずみ。
真琴(でも、あずみだけがわたしの本当の気持ちを知ってくれている)
高校に入学し、制服のズボンをはきネクタイを締める真琴。
真琴(高校の制服も中学同様にスカートだと笑われるから、兄貴のお下がりでいいと言ってズボンにした。きっとお母さんやお父さんも、わたしはスカートには興味がないと思っている)
高校に入り、男子生徒だと思い声をかけてきた同級生たちに対して、女だと説明する真琴。
それを聞いて周りは驚く。
真琴(わたしはこれまで自分の本音を押し殺してきた。一度でいいから『かわいい』と言われたいのに、『かっこいい』と褒められても正直複雑。だけど、今さら本当は女の子として見てもらいたいなんて言えるわけないし…)
小学生のときに変と言われたり、中学生のときの制服のスカート姿に笑われたことを思い返す真琴。
真琴(それに、もうあんな思いはしたくない。うらやましがられたりもするけど、…こんなボーイッシュな自分がコンプレックスだ)
(回想終了)
〇回想前の続き、学校、階段(朝礼前)
階段を上る真琴とあずみ。
その2人を追い越すようにして、下からだれかが階段を駆け上がってくる。
その人物が真琴に気づく。
太樹「おっ、真琴じゃん」
真琴「たっちゃん!」
1つ年上の幼なじみの太樹だとわかり、少し頬を赤くする真琴。
――丹羽太樹。
身長180センチの爽やかな茶髪の短髪。
真琴(たいちゃんはわたしの幼なじみで、唯一家族以外でわたしが見上げることのできる男性)
柔らかく微笑む太樹。
太樹「おはよう。あずみちゃんもおはよう」
あずみ「おはようございます〜」
真琴「おはよう。今きたところ?」
太樹「ううん、サッカー部の朝練終わったとこ」
真琴「そうなんだ。大会近いって言ってたもんね」
太樹「ああ。キャプテンになって初めての大会だからな。気合い入れないと」
真琴「そっか。がんばってね」
太樹「おう!」
爽やかな笑顔を見せて、3年の教室へと向かう太樹。
その後ろ姿をぽっと頬を赤く染めて見つめる真琴。
あずみ「相変わらず、太樹先輩かっこいいよね〜」
真琴「…うんっ」
あずみ「何度も言ってるけど、そんなに好きならさっさと告っちゃえばいいのに」
真琴「む、無理無理…!」
顔を真っ赤にして、両手を顔の前でブンブンと振る真琴。
真琴(だって、たっちゃんはわたしのことを妹のように――ううん、弟のようにしか思っていない。告白しても結果なんてわかりきってるのに、…そんな勇気わたしにはないよ)
〇前述の続き、学校、教室(朝礼前)
あずみ「おはよ〜!」
真琴「おはよう」
クラスメイトの女子たち「「おはよう!あずみ、真琴ちゃん」」
自分の席に着こうとする真琴。
そんな真琴を後ろからクラスメイトの男子が肩を組んでくる。
クラスメイトの男子たち「おっはよー、真琴!くるの遅ぇぞ!」
真琴「ごめんごめん。途中で忘れ物したのに気がついて」
クラスメイトの男子たち「それよりもさ、真琴。昨日のボクシング見た?」
真琴「あ〜、うん。兄貴たちが見てたから」
クラスメイトの男子たち「やべーよな!最後の!まさかあそこでノックアウトとはな!」
真琴「だねー。わたしも興奮しちゃった」
クラスメイトの男子グループに囲まれ、楽しそうに話す真琴。
真琴(見てわかるように、男子もわたしを女として認識していない。バカ話で盛り上がって楽しかったりもするけど、一切女として見られていないことがやっぱりどこか切なかったり)
クラスの男友達と笑い合う真琴を見て、一部のクラスメイトの女子たちは眉を潜めてひそひそ話をする。
〇前述の続き、学校、教室(朝礼)
担任が教卓の前に立ち、いろいろと伝達事項をクラスに伝える。
その話をぼうっとしながら聞く真琴。
担任「――ということで、今日は新しいクラスメイトを紹介します」
それを聞き、驚いて目を見開ける真琴。
周りのクラスメイトたちも転校生がくると聞いて騒ぎ出す。
クラスメイトの男子たち「おい、真琴!男子か女子どっちだと思う?」
斜め前の席の男子が真琴のほうを振り返る。
真琴「さ〜、どっちだろうね」
クラスメイトの男子たち「そりゃもちろん女子がいいに決まってるよな!美女こいっ!」
顔の前で手を合わせるクラスメイトの男子。
それを見て、苦笑いを浮かべる真琴。
真琴(…あの、わたしも一応女子なんだけど。絶対今の発言、わたしが女子って忘れてたよね?まあ、そんなこともうどっちでもいいんだけど)
小さなため息をつく真琴。
担任「それでは入ってきてください」
担任がそう言うと、教室の前のドアが開く。
真琴(自分でも女子として見られない今の立場を理解してるし、今さら期待もしていない。だから、わたしを女の子扱いしてくれるような人は現れない。そう思っていたのに――)
ドアが開き、転校生が入ってくる。
ひと目で長身とわかるスタイルのよさに、明るい髪色のマッシュヘアが特徴的。
その姿を見て、またざわつく教室内。
担任「有島流星くんだ」
流星「有島です。よろしくお願いします」
ペコッと頭を下げる流星。
真琴は顔を上げた流星と目が合う。
真琴(うわっ、きれいな顔立ち…)
心の中でつぶやく真琴。
流星も真琴と目が合い、驚いたように目を見開く。
流星のかっこよさにクラスメイトの女子たちは興奮している。
担任「有島の席は〜…。そうだな、大庭の隣が空いてるからそこに座ってくれ」
真琴「…えっ!?」
とっさに自分の席の隣の空席に目をやる真琴。
ゆっくりと歩み寄ってくる転校生の流星にドキドキする真琴。
真琴の隣に流星が座る。
流星「よろしくね」
真琴「よ…よろしく」
緊張で声が上ずり、うつむく真琴。
そんな真琴を見て、くすっと笑う流星。
流星「なんかかわい」
真琴「へっ!?…か、“かわいい”!?」
流星「だって、てっきり無視されるのかと思ったから反応が初々しくって。隣がやさしそうな女の子でよかったー」
真琴「お…女の子……」
呆然とする真琴。
真琴(初対面の人には絶対に男子と見間違われるのに、有島くんは間違わなかった)
ドキドキしながら困惑する真琴。
真琴(…それに“かわいい”なんて言葉、生まれて初めて言われた)