《マンガシナリオ》キミだけに、この溺愛を捧ぐ
第3話
◯学校、教室(朝礼前)


翌日。

教室に入る真琴。

真琴が席に着くと、すぐさま昨日のカラオケメンバーたちが集まってくる。


クラスメイトの男子たち「おっは〜、真琴」

真琴「おはよう」

クラスメイトの男子たち「昨日のカラオケ楽しかったな!」

クラスメイトの男子たち「また有島誘ってみんなで行こーぜ」

クラスメイトの男子たち「カラオケ勝負、次は真琴に負けねーからな!」


肩を組んだり、男友達からじゃれ合いされる真琴。

そこへ、登校した流星がやってくる。


クラスメイトの男子たち「おっ!有島、おはよー」


真琴の肩を組んでいる男友達が流星にあいさつをする。

顔を向けた流星が、真琴が男友達に肩を組まれていると知ってはっとした表情を見せる。


流星「なあ、俺もそこに混ぜてよ」


そう言って、流星は真琴の肩から男友達の腕を外し、代わりに自分と肩を組ませた。

キョトンとして、されるがままに流星と肩を組む男友達。


クラスメイトの男子たち「そうだ、真琴!英語の宿題のここ教えてよ」


英語の教科書を持って、真琴の席へやってくるクラスメイトの男子。

教科書を覗き込む真琴。


真琴「えっと…。そこは、前文が疑問形で終わってるから――」


クラスメイトの男子といっしょに英語の教科書を覗き込みながら教える真琴。


クラスメイトの男子たち「そうか!だから、この答えになるのか!」

真琴「そうそう。今の説明でわかった?」

クラスメイトの男子たち「おう!すっげーわかりやすかった!」


そう言って、真琴の頭を髪がぐちゃぐちゃになるまで撫でるクラスメイトの男子。


真琴「もう、やりすぎだって〜」


真琴は笑っているが、なぜか真琴の頭を撫でるクラスメイトの男子の手を取る流星。

そして、ぎゅっと握りしめる。


流星「じゃあさ、今の俺にも教えてよ」

クラスメイトの男子「…お、おう」


なぜ流星に手を握られているのか疑問に思いながらも、ぎこちなくうなずくクラスメイトの男子。

そのあとも、男子が真琴に触ろうとするものなら流星が間に入った。

その様子を眉をひそめて、教室の隅から見ている一部のクラスメイトの女子たち。



◯学校、教室(昼休み)


あずみと机を合わせてお弁当を食べる真琴。


真琴「ごちそうさまでした」


手を合わせる真琴。

真琴は、ふと机に置いていたスマホの画面に目をやり、今日の日付を見てはっとする。


真琴「そういえばわたし、今日花壇の水やり当番だったんだ…!」

あずみ「真琴、今日だったんだ。あれ、地味に面倒くさいよね〜」

真琴「まあ仕方ないよ。わたし、今から行ってくるね」

あずみ「こんな暑いのにご苦労さま。日傘持ってる?」

真琴「持ってないけど、大丈夫。すぐに終わらせてくるから」


あずみに軽く手を上げ、教室を出ていく真琴。



◯前述の続き、学校、校舎裏の花壇(昼休み)


校舎裏のプール近くの花壇の水やりをする真琴。

暑い太陽の日差しが降り注ぐ中、真琴は軽く汗を流しながら水の出るホースを持つ。


真琴(こんな感じでいいかな)


水を浴び生き生きとする花壇の花を見て微笑む真琴。


クラスメイトの女子たち「大庭さん」


そのとき、真琴の名前が呼ばれる。

振り返ると、真琴のクラスメイトの女子3人が立っていた。

クラスメイトの女子たちの表情は険しく、怒っているように見える。


真琴「あれ?どうかした?」

クラスメイトの女子たち「ちょっとついてきてもらってもいいかな」


それを聞いて、キョトンと首をかしげる真琴。



◯前述の続き、学校、プールサイド(昼休み)


花壇すぐ近くのプールサイドへ連れてこられた真琴。

真琴を囲むようにして3人の女子たちが並ぶ。


クラスメイトの女子たち「大庭さん、…なんなの?」


1人の女子に睨まれキョトンとする真琴。


真琴「なんなの…とは?」

クラスメイトの女子たち「うわっ、白々しい。そうやって天然なフリして、クラスの男子たちに色目使ってるんでしょ」

真琴「え…、色目?わたしが…?」

クラスメイトの女子たち「どう見たってそうでしょ!男子からチヤホヤされていい気になって」

真琴「チヤホヤ…」


女子たちに責められ、身に覚えのないことにぽかんとする真琴。

男友達に絡まれたりする場面を想像する。


真琴「…待って、待って!見てたらわかるよね?チヤホヤされてるんじゃなくて、ただの友達としての絡みで…」

クラスメイトの女子たち「友達同士だったとしても、男女であんなにベタベタなんてしないわよ、普通!」

クラスメイトの女子たち「それに昨日の夜、有島くんと2人で歩いてたよね?さっそく有島くんを狙うつもり?」

真琴「だから、有島くん含め、わたしは男子たちから女として見られてるわけじゃなく――」

クラスメイトの女子たち「そういって正当化して、男子と仲よしアピールがほんっと目障りなの!」


そう叫んだ女子が、真琴の体を思いきり突き飛ばす。


真琴(あっ…)


真琴は大きくバランスを崩し、背中からプールに落ちてしまう。

制服のまま水の中へ落ち、呆然としてプールの中に立ち尽くす真琴。


流星「おい!お前ら、なにしてんだよ!」


そのとき、フェンスの向こう側に流星が現れる。

プールの中にいる真琴を見つけ、慌ててフェンスをよじ登ろうとする。

真琴は流星がくる前に軽々とプールから上がると、プールサイドに腰掛ける。


真琴「これでスッキリした?」


クラスメイトの女子たちに濡れた前髪をかき上げながら笑って話す真琴。


真琴「わたしは意外と気持ちよかったよ。わたしのこと好きじゃない人たちから直接言ってもらえて」


清々しいくらいにニッと白い歯を見せて笑う真琴に、クラスメイトの女子たちは言い淀む。


真琴「でも本当に、わたしは色目使ってるわけでもないし、クラスの男子だってわたしのことなんてなんとも思ってないよ。みんなのほうがうらやましい。ちゃんと男子から女の子扱いされて」


そう言って笑ってみせる真琴だが、その表情はどこか切なそう。


流星「真琴ちゃん、大丈夫か!?」

クラスメイトの女子たち「「あ、有島くん…!」」


そこへ、フェンスをよじ登ってきた流星が駆けつける。


真琴「うん、大丈夫大丈夫。それに、水やりで汗かいちゃってたからちょうどよかった」

流星「ちょうどよかったって…」


心配そうに真琴を見つめる流星。

振り返って、クラスメイトの女子たちを睨みつける。


流星「さっき真琴ちゃんのこと突き飛ばしたよな?」


流星に怒鳴られ、怯えるクラスメイトの女子たち。


流星「真琴ちゃんがなにしたって言うんだよ」

真琴「違う、違う!わたしが勝手に足を滑らせただけだから」


慌てて流星とクラスメイトの女子たちの間に入る真琴。


流星「真琴ちゃん、なに言って――」

真琴「みんなは先生からの伝言を伝えにきてくれただけ」

流星「伝えにっていったって、なんでプールサイドなんかで」

真琴「それは…、暑いから?」


笑ってごまかす真琴。


真琴「みんな、教えてくれてありがとうね。先に戻ってくれてかまわないから」


真琴は流星から引き離すように、クラスメイトの女子たちをプールサイドから追い出す。

真琴と流星の2人だけになったプールサイド。


流星「…で、なんでそんなあっけらかんとしてるの。真琴ちゃん」

真琴「なんでって、…そうだなぁ。べつにこういうこと、初めてじゃないから。慣れてるっていうかなんというか」


濡れたズボンの裾やシャツの裾を絞りながら流星に笑ってみせる真琴。

これまでのことを振り返っていた。

一部女子からはかっこいいと憧れられる一方、その逆の女子からは男子と仲がよすぎることに嫉妬されていた。

プールに落とされたというのに笑ってごまかす真琴の姿を見て、流星は呆れたようにため息をつく。


流星「真琴ちゃんがそう言うなら…わかった。ひとまず、早く着替えに行こ。保健室に着替えくらいあるでしょ」



◯学校、保健室(昼休み)


真琴「失礼します」

流星「失礼しま〜す」


保健室へ入る真琴と流星。

しかし、ガランとしていてだれもいない。


流星「あれ?先生は?」

真琴「なんか、いなさそうだね」


保健室の中をキョロキョロも見てまわる2人。


流星「先生いつ帰ってくるかわからないし、黙って制服だけ借りるとするか」

真琴「うん。たしか、あの上の棚に入ってるの前に見たことがある」


そう言って、真琴は上の棚に手を伸ばす。

しかし、背伸びをしてもあと少しのところで取っ手に届かない。

そのとき、背後に気配を感じる真琴。


流星「この棚でいいの?」


慌てて振り返ると真琴の後ろには流星が立っていて、流星も棚に手を伸ばしていた。

流星の胸板に真琴は顔が引っつきそうになって、とっさに顔を赤くする。

流星は、真琴が背伸びしても届かなかった棚の取っ手を軽々とつまんだ。


流星「あ、ほんとだ。着替えの制服が入ってる」


棚の中には着替えの制服が入っている。

真琴はこれまで高いところにあるものは手を伸ばして取っていた。

背の高い真琴は、女子から高いところにあるものを取ってほしいと頼まれることも多かった。

だから、だれかに自分では届かないところのものを取ってもらうというのは初めての経験だった。


流星「制服のサイズは?」

真琴「L」


流星は適当にLサイズの制服を取って真琴に手渡す。


真琴「あ、ありがとう」


真琴は流星から制服を受け取る。


真琴「そういえばずっと気になってたんだけど、有島くんって身長何センチ?」

流星「俺?185センチ」

真琴「どうりで高いわけだ!」

流星「俺のことはいいからさ。早く着替えてきなよ」

真琴「あ、うん」


真琴は適当にベッドの上に制服を並べると、囲むようにして白いカーテンを閉めた。

まずは濡れたシャツを脱ぎ、着替えのシャツに着替える真琴。

そして、制服の下に手を伸ばしたときになにかに気づいてはっとする。


真琴「あ、有島くん…」


カーテンの向こう側から流星を呼ぶ真琴の声が聞こえる。


流星「ん?どうかした?」

真琴「あの…。非常に申し訳ないんだけど、取ってもらった制服…スカートなんだよね。ズボンあるかな」

流星「ズボン?…ああ、ちょっと待ってて」


一瞬疑問に思った流星だったが、真琴がスカートではなくズボン姿だったことを思い出し、再度制服を探す。

しかし、置いてある制服の着替えはすべてスカートだった。


流星「ごめん、真琴ちゃん。探したんだけど、ズボン見当たらなかった」

真琴「え…」

流星「でも、もう少し探してみるよ。だから――」

真琴「…あっ、いいのいいの!ないなら仕方ないから」


真琴はベッドの上に広げていたスカートに目をやる。

そして、つばをごくりと呑むとそのスカートに手を伸ばした。

――数分後。

着替えた真琴がカーテンを開けて出てくる。

おもむろに振り返る流星。

そこに立つ真琴の姿に思わず目を丸くして佇む流星。


流星「真琴ちゃん、その格好…」


真琴のスカートの制服姿に見惚れる流星。

流星はほんのり頬を赤く染める。


真琴「…やっぱり変だよね!わたしがスカートなんて…!」


恥ずかしくて、否定しながら顔を真っ赤にする真琴。


真琴「さっき気づいたんだけど、外暑かったせいか意外とズボン乾いてるんだよね。だから、やっぱりこっちに――」

流星「えっ、なんで!?ちょっと待っ――」


真琴が自分のズボンに着替えると言い出し、真琴の制服のスカート姿に見惚れていた流星は慌てて駆け寄ろうとする。

しかし、床に置いてあった段ボールに足をつまずく。

そのままバランスを崩し――。

気づいたら、保健室の白いベッドの上で流星に押し倒される真琴。

キスをされそうな至近距離に、戸惑いながらも顔を赤くする真琴。

そんな真琴を上から見つめる流星。

流星も頬を赤く染める。


真琴(…な、なにこの展開。なんでわたしが、有島くんとこんなことに…?)
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