甘苦とコンプレックス・ラブ
#1 玉砕覚悟からの大逆転?
#1 玉砕覚悟からの大逆転?
○高校入学直前の春休み、散らかったまなの部屋
まなは自室で鏡を覗き込んでいる。目を見開いたような表情。パンパンの顔、もっさりとした黒髪、ぼさぼさの眉毛。ダボダボのスウェット姿。
立ち上がって全身鏡で自分の姿を見て、また驚愕している。
まな「なにこれやばい、可愛くならないと死ぬ」
鏡をじっと見ているうちに涙が出てくる。
まな「こんなんだから、あいつにまともに喋ってもらえなくなっちゃったんだ」
凛太郎(りんたろう)の姿を思い出している。色白の肌にさらさらのマッシュルームヘア(黒髪)、切れ長の涼しげな目、すっと通った鼻筋に薄い唇。
まな「それに比べて」
また鏡を覗き込む。まなの顔のパーツは全部丸っこい。目は大きく、ぱっちり二重。
凛太郎との関係の回想。小学校高学年、クラスの女子にモテモテだった凛太郎。中学校のときは女子に一目置かれる存在になり、まなへの態度が冷たくなる。言葉なくすれ違うふたり。
だけど、凛太郎と同じ高校を目指して猛勉強の末に合格。幼なじみのため、母親同士の間で合格については筒抜け。
まな「見れば見るほどやばい。凛太郎と同じ高校だって浮かれてる場合じゃない」
まな「なんとかしなくちゃ」
スマホを手に取って、コスメアプリをダウンロードしてSNSを起動、アイドルやモデル、インフルエンサーをフォロー。決意するように立ち上がる。
まな「凛太郎の隣に立っても恥ずかしくないくらい可愛くなるまで、絶対に妥協しない」
まな「努力しまくって誰もがびっくりするくらい可愛くなって、それから……」
まな、「あること」を決意する。
まな「リミットは、高校の卒業式!」
○3年後、高校の卒業式、空き教室
まな「わたし、凛太郎のことが好きなの」
リミットに決めていた高校の卒業式、真顔で凛太郎に告白するまな。見た目は3年前とかなり変わっており、派手になっている。ゆるく波打つロングヘア(黒髪)、メイクばっちりの顔に、短めの制服のスカート。制服はブレザー。
まな「最後にはっきり伝えたかっただけだから。ごめんね、卒業式の日に引き止めたりして」
よし、終わった。ほっとひと息ついて、その場から立ち去ろうとするが……。
凛太郎「わかった」
真顔でまなを見つめる凛太郎。表情からは感情が読み取れない。
まな「それじゃ……」
凛太郎「付き合う」
まな「え? 今なんて?」
凛太郎「ちゃんと人の話聞けよ。だから、付き合ってもいいって」
まな「いや、わたし、付き合ってとは言ってな……」
凛太郎「じゃあ俺、クラス会あるから帰る。あとで連絡するから」
不機嫌そうな表情でまなを睨みつけ、颯爽と教室から出て行ってしまう凛太郎。
まな「え?」
思わず声を漏らして、呆然とその場に立ち尽くすまな。
まな「いやいや、なんであの流れで付き合うってなるの……?」
立ち尽くしていると、ブレザーのポケットに入れていたスマホが震える。「まな、クラス会行くよ!」という友達からのメッセージ。
まな「2組は……どこ、行くんだろうな」
まなは5組、凛太郎は2組。この3年間授業で一緒になることはほぼなく、話したことも数えるくらいだったことを思い出す。複雑な表情を浮かべる。
〇卒業式の夜、まなの部屋。ベッドに寝転がるまな。
まな「ていうか、凛太郎と付き合うってことは、あいつ、わたしの彼氏ってこと?」
ベッドに寝転がってスマホでコスメ情報を眺めながら呟く。まなと凛太郎は偶然にも、進学する大学が同じ。
まな(高校3年間、努力しまくって可愛くなって、ずっと好きだった凛太郎に卒業式の日に告白、玉砕、春からは晴れて大学デビュー、それが目標だった)
まな(パンケーキもパフェも我慢して、毎日朝5時半に起きて髪をセットしてメイクして、勉強が忙しくない時期の休日は、朝から晩まで雑誌とアプリでメイクやファッションを研究した。努力の甲斐あってモテるようにはなったけど、凛太郎以外の男子には興味が湧かなかった)
そのとき、凛太郎からのLINEを受信する。
凛太郎「今、暇?」
まな「いや、暇だけど。数年ぶりのLINEを、こんな何気なく送ってこないでよ!」
まなが呟いて、スマホをベッドの上に投げ出す。両手で顔を覆う。
まな「見た目は努力でそこそこになっても、恋愛偏差値低いのはどうにもなんない」
まな「付き合うって、なにするの? 手繋いでデートして、抱き合って、キスをして?」
まながぶつぶつ呟いて赤面する。ベッドの上をごろごろのたうち回る。
○高校入学直前の春休み、散らかったまなの部屋
まなは自室で鏡を覗き込んでいる。目を見開いたような表情。パンパンの顔、もっさりとした黒髪、ぼさぼさの眉毛。ダボダボのスウェット姿。
立ち上がって全身鏡で自分の姿を見て、また驚愕している。
まな「なにこれやばい、可愛くならないと死ぬ」
鏡をじっと見ているうちに涙が出てくる。
まな「こんなんだから、あいつにまともに喋ってもらえなくなっちゃったんだ」
凛太郎(りんたろう)の姿を思い出している。色白の肌にさらさらのマッシュルームヘア(黒髪)、切れ長の涼しげな目、すっと通った鼻筋に薄い唇。
まな「それに比べて」
また鏡を覗き込む。まなの顔のパーツは全部丸っこい。目は大きく、ぱっちり二重。
凛太郎との関係の回想。小学校高学年、クラスの女子にモテモテだった凛太郎。中学校のときは女子に一目置かれる存在になり、まなへの態度が冷たくなる。言葉なくすれ違うふたり。
だけど、凛太郎と同じ高校を目指して猛勉強の末に合格。幼なじみのため、母親同士の間で合格については筒抜け。
まな「見れば見るほどやばい。凛太郎と同じ高校だって浮かれてる場合じゃない」
まな「なんとかしなくちゃ」
スマホを手に取って、コスメアプリをダウンロードしてSNSを起動、アイドルやモデル、インフルエンサーをフォロー。決意するように立ち上がる。
まな「凛太郎の隣に立っても恥ずかしくないくらい可愛くなるまで、絶対に妥協しない」
まな「努力しまくって誰もがびっくりするくらい可愛くなって、それから……」
まな、「あること」を決意する。
まな「リミットは、高校の卒業式!」
○3年後、高校の卒業式、空き教室
まな「わたし、凛太郎のことが好きなの」
リミットに決めていた高校の卒業式、真顔で凛太郎に告白するまな。見た目は3年前とかなり変わっており、派手になっている。ゆるく波打つロングヘア(黒髪)、メイクばっちりの顔に、短めの制服のスカート。制服はブレザー。
まな「最後にはっきり伝えたかっただけだから。ごめんね、卒業式の日に引き止めたりして」
よし、終わった。ほっとひと息ついて、その場から立ち去ろうとするが……。
凛太郎「わかった」
真顔でまなを見つめる凛太郎。表情からは感情が読み取れない。
まな「それじゃ……」
凛太郎「付き合う」
まな「え? 今なんて?」
凛太郎「ちゃんと人の話聞けよ。だから、付き合ってもいいって」
まな「いや、わたし、付き合ってとは言ってな……」
凛太郎「じゃあ俺、クラス会あるから帰る。あとで連絡するから」
不機嫌そうな表情でまなを睨みつけ、颯爽と教室から出て行ってしまう凛太郎。
まな「え?」
思わず声を漏らして、呆然とその場に立ち尽くすまな。
まな「いやいや、なんであの流れで付き合うってなるの……?」
立ち尽くしていると、ブレザーのポケットに入れていたスマホが震える。「まな、クラス会行くよ!」という友達からのメッセージ。
まな「2組は……どこ、行くんだろうな」
まなは5組、凛太郎は2組。この3年間授業で一緒になることはほぼなく、話したことも数えるくらいだったことを思い出す。複雑な表情を浮かべる。
〇卒業式の夜、まなの部屋。ベッドに寝転がるまな。
まな「ていうか、凛太郎と付き合うってことは、あいつ、わたしの彼氏ってこと?」
ベッドに寝転がってスマホでコスメ情報を眺めながら呟く。まなと凛太郎は偶然にも、進学する大学が同じ。
まな(高校3年間、努力しまくって可愛くなって、ずっと好きだった凛太郎に卒業式の日に告白、玉砕、春からは晴れて大学デビュー、それが目標だった)
まな(パンケーキもパフェも我慢して、毎日朝5時半に起きて髪をセットしてメイクして、勉強が忙しくない時期の休日は、朝から晩まで雑誌とアプリでメイクやファッションを研究した。努力の甲斐あってモテるようにはなったけど、凛太郎以外の男子には興味が湧かなかった)
そのとき、凛太郎からのLINEを受信する。
凛太郎「今、暇?」
まな「いや、暇だけど。数年ぶりのLINEを、こんな何気なく送ってこないでよ!」
まなが呟いて、スマホをベッドの上に投げ出す。両手で顔を覆う。
まな「見た目は努力でそこそこになっても、恋愛偏差値低いのはどうにもなんない」
まな「付き合うって、なにするの? 手繋いでデートして、抱き合って、キスをして?」
まながぶつぶつ呟いて赤面する。ベッドの上をごろごろのたうち回る。