甘苦とコンプレックス・ラブ
#6 すれ違いに嵐
〇サークル棟の空き部室前
無言でまなの手を引く凛太郎と、されるがままのまな。
まな(いったいどこに連れて行かれるの?)
まな「……凛太郎、あの」
凛太郎、無言で部屋のドアを開けて入っていく。空き部室なので、埃の被っていそうな机とイス、本棚しか見当たらない。
まな、凛太郎に話しかけようとするが、無表情で振り返った凛太郎に強く抱きしめられる。
凛太郎「なにしてたんだよ、あんなに近づいて」
外では雨が降っているので、部屋の中は薄暗い。雨音が響いている。まな、答えられずに黙ってしまう。
凛太郎「言えないようなこと、してたのかよ」
まな「そんなわけないでしょ。悟くんに、曲を一緒に選んでって頼まれて」
凛太郎「どうして俺に黙ってたんだよ。うちの部室、部員以外禁制だぞ」
まな「悟くんに言ってよ。痛いから離して」
凛太郎「離すわけないだろ」
凛太郎、舌打ちをしてまなの顎を掬い上げる。そのままキスする。
まな「り、んたろ……んっ」
凛太郎、まなの身体を壁に押し付けて、荒々しくキスする。何度もキスをされて、まながその場にへたり込む。凛太郎も座り込み、まなの腰に手を回す。
凛太郎「悟に、どこ触られた? ここだけだよな?」
凛太郎、まなの手首を掴んでそのまま壁に押し付ける。まなが頷く。
まな「凛太郎、怒ってるの?」
凛太郎、返事をしない。キスがどんどん深くなっていく。
凛太郎「またこんな服着やがって」
凛太郎、まなが着ている透け素材の白いブラウスのボタンを外していく。
まな「勝手に部室に入ったこと、怒ってるなら謝るから」
凛太郎「そんなこと、どうだっていいんだよ」
まな(じゃあやっぱり、悟くんと二人きりだったことを怒ってるの?)
凛太郎、まなの頬にキスをし、首筋にキスをしてくる。まな、思わず声を漏らす。
首筋や鎖骨にキスをされて、まなが思わず身をよじる。
凛太郎「逃げるなよ」
まな(凛太郎は、なにを考えているんだろう)
まな(怒ってるの? やきもちを妬いてるの? それとも、こういうことをしたいだけ?)
悟(凛太郎と一緒にいて、楽しい?)
まな(わたしのこと、好きなの? 嫌いなの? いくら頑張ったって、「可愛い」なんて絶対に言ってくれない)
凛太郎「まな?」
凛太郎、黙ってしまったまなの顔を覗き込む。
まな「凛太郎は、わたしのこと……」
まなが続きを言い淀んでいると、スマホのバイブの音が聞こえる。凛太郎が舌打ちして、ポケットからスマホを取り出す。
悟「凛太郎、早く来ないと留依さんがブチ切れてるよ」
悟「おーい、聞いてるー? あんまりエロいことしたら、サークル棟使用禁止になるよー」
悟の声が大きいので、まなにも聞こえている。
凛太郎「……バカ言うなよ。今行く」
凛太郎、電話を切る。ため息をついてまなに向き直り、ブラウスのボタンを留めて髪をそっと梳いてくれる。
凛太郎「ごめん。……もう、あいつと二人きりになるなよ」
凛太郎「雨降ってるから、気をつけて帰れよ」
凛太郎、部屋を出ていく。まなは座り込んだまま。数分クールダウンした後に外に出ると、悟が立っている。
悟「わ、顔真っ赤。凛太郎って意外と露骨だねー」
悟、近づいてきてまなの首筋を指差す。首筋にはくっきりキスマーク。
悟「よかったね。まなちゃん、愛されてるよ」
まな「……ほっといて。わたし、帰るから」
悟、横を通り過ぎようとしたまなの腕を掴む。
まな「離してよ」
悟「でも、まなちゃんはそう思ってないみたいだね」
まな「曲のことは、あとでLINEするから」
悟「だから言ったじゃん」
悟「どうして凛太郎と付き合ってるんだろうなって思ってる、って」
○軽音楽部の部室前、練習終了後
凛太郎と留依のバンドが、4講目に入っていた練習を終えて部室から出てくる。
悟「あ、お疲れ」
悟が壁にもたれながらスマホをいじっている。
凛太郎「悟、おまえ、まなになにしたんだよ」
悟「なにもしてないよ? それより凛太郎、このバンド入ってよ」
悟がスマホの画面を凛太郎に見せてくる。まなに聴かせたプレイリストの画面。
凛太郎「……このバンド、俺には合わないだろ」
悟「まなちゃん、楽しそうに聴いてたよ。好きなんだね、こういうポップな感じの曲」
悟が試すような表情で、凛太郎を見上げる。
悟「まなちゃんには、5曲選んでってお願いしたんだ。どれか楽しみだな」
凛太郎、ぐっと拳を握りしめる。
悟「あーあ、イライラするなぁ。そんなに好きなら、ちゃんと言ってあげたらいいのに」
凛太郎「は?」
悟「あんなことするくらいなら、愛してるよって一言言えばいいんだよ。簡単じゃん」
悟、自分の首を指差す。凛太郎の頬がかっと赤くなる。
凛太郎「……わかった。ベースは俺がやる」
悟「うん、りょーかい。まなちゃんにもよろしくね」
留依がギターケースを背負って部室から出てくる。
留依「ねえ凛太郎、さっきの子って彼女? 派手でびっくりしちゃった」
悟「それ、留依さんに関係あります? 別にいいでしょ、どうでも」
留依「悟に訊いてないでしょ。早く帰れば?」
悟「まなちゃんが派手なのは見た目だけですよ。留依さんよりはずっとマシでしょ」
凛太郎(それは俺のセリフだろ)
留依「なにそれ、どういう意味?」
悟「自分で考えてください。じゃ、お先です」
悟、サークル棟を出ていく。
凛太郎(どうして悟に言われないといけないんだ。おまえが、まなのなにを知ってるっていうんだ)
留依「なんなのあれ、感じ悪い。ちょっと可愛い顔してるからって」
凛太郎「すいません、俺もバイトあるんで」
留依「悟って、凛太郎の彼女が好きなのかな。奪われちゃったら、どうする?」
留依、凛太郎の腕にそっと触れる。凛太郎が思いきり振り払う。
凛太郎「知らないですけど、そんなことは絶対にないです」
留依「絶対に? じゃあ、凛太郎が他の女の子を好きになることも、絶対にないの?」
凛太郎「ないです」
留依「ふうん、つまんないの」
留依、凛太郎の腕を強く引っ張って頬にキスをする。凛太郎、飛び退いて留依を睨みつける。
留依「そんな顔して、女慣れしてないの? かわいー」
凛太郎、頬を強く擦る。留依、凛太郎に微笑みかけ、サークル棟の廊下を歩いていく。
無言でまなの手を引く凛太郎と、されるがままのまな。
まな(いったいどこに連れて行かれるの?)
まな「……凛太郎、あの」
凛太郎、無言で部屋のドアを開けて入っていく。空き部室なので、埃の被っていそうな机とイス、本棚しか見当たらない。
まな、凛太郎に話しかけようとするが、無表情で振り返った凛太郎に強く抱きしめられる。
凛太郎「なにしてたんだよ、あんなに近づいて」
外では雨が降っているので、部屋の中は薄暗い。雨音が響いている。まな、答えられずに黙ってしまう。
凛太郎「言えないようなこと、してたのかよ」
まな「そんなわけないでしょ。悟くんに、曲を一緒に選んでって頼まれて」
凛太郎「どうして俺に黙ってたんだよ。うちの部室、部員以外禁制だぞ」
まな「悟くんに言ってよ。痛いから離して」
凛太郎「離すわけないだろ」
凛太郎、舌打ちをしてまなの顎を掬い上げる。そのままキスする。
まな「り、んたろ……んっ」
凛太郎、まなの身体を壁に押し付けて、荒々しくキスする。何度もキスをされて、まながその場にへたり込む。凛太郎も座り込み、まなの腰に手を回す。
凛太郎「悟に、どこ触られた? ここだけだよな?」
凛太郎、まなの手首を掴んでそのまま壁に押し付ける。まなが頷く。
まな「凛太郎、怒ってるの?」
凛太郎、返事をしない。キスがどんどん深くなっていく。
凛太郎「またこんな服着やがって」
凛太郎、まなが着ている透け素材の白いブラウスのボタンを外していく。
まな「勝手に部室に入ったこと、怒ってるなら謝るから」
凛太郎「そんなこと、どうだっていいんだよ」
まな(じゃあやっぱり、悟くんと二人きりだったことを怒ってるの?)
凛太郎、まなの頬にキスをし、首筋にキスをしてくる。まな、思わず声を漏らす。
首筋や鎖骨にキスをされて、まなが思わず身をよじる。
凛太郎「逃げるなよ」
まな(凛太郎は、なにを考えているんだろう)
まな(怒ってるの? やきもちを妬いてるの? それとも、こういうことをしたいだけ?)
悟(凛太郎と一緒にいて、楽しい?)
まな(わたしのこと、好きなの? 嫌いなの? いくら頑張ったって、「可愛い」なんて絶対に言ってくれない)
凛太郎「まな?」
凛太郎、黙ってしまったまなの顔を覗き込む。
まな「凛太郎は、わたしのこと……」
まなが続きを言い淀んでいると、スマホのバイブの音が聞こえる。凛太郎が舌打ちして、ポケットからスマホを取り出す。
悟「凛太郎、早く来ないと留依さんがブチ切れてるよ」
悟「おーい、聞いてるー? あんまりエロいことしたら、サークル棟使用禁止になるよー」
悟の声が大きいので、まなにも聞こえている。
凛太郎「……バカ言うなよ。今行く」
凛太郎、電話を切る。ため息をついてまなに向き直り、ブラウスのボタンを留めて髪をそっと梳いてくれる。
凛太郎「ごめん。……もう、あいつと二人きりになるなよ」
凛太郎「雨降ってるから、気をつけて帰れよ」
凛太郎、部屋を出ていく。まなは座り込んだまま。数分クールダウンした後に外に出ると、悟が立っている。
悟「わ、顔真っ赤。凛太郎って意外と露骨だねー」
悟、近づいてきてまなの首筋を指差す。首筋にはくっきりキスマーク。
悟「よかったね。まなちゃん、愛されてるよ」
まな「……ほっといて。わたし、帰るから」
悟、横を通り過ぎようとしたまなの腕を掴む。
まな「離してよ」
悟「でも、まなちゃんはそう思ってないみたいだね」
まな「曲のことは、あとでLINEするから」
悟「だから言ったじゃん」
悟「どうして凛太郎と付き合ってるんだろうなって思ってる、って」
○軽音楽部の部室前、練習終了後
凛太郎と留依のバンドが、4講目に入っていた練習を終えて部室から出てくる。
悟「あ、お疲れ」
悟が壁にもたれながらスマホをいじっている。
凛太郎「悟、おまえ、まなになにしたんだよ」
悟「なにもしてないよ? それより凛太郎、このバンド入ってよ」
悟がスマホの画面を凛太郎に見せてくる。まなに聴かせたプレイリストの画面。
凛太郎「……このバンド、俺には合わないだろ」
悟「まなちゃん、楽しそうに聴いてたよ。好きなんだね、こういうポップな感じの曲」
悟が試すような表情で、凛太郎を見上げる。
悟「まなちゃんには、5曲選んでってお願いしたんだ。どれか楽しみだな」
凛太郎、ぐっと拳を握りしめる。
悟「あーあ、イライラするなぁ。そんなに好きなら、ちゃんと言ってあげたらいいのに」
凛太郎「は?」
悟「あんなことするくらいなら、愛してるよって一言言えばいいんだよ。簡単じゃん」
悟、自分の首を指差す。凛太郎の頬がかっと赤くなる。
凛太郎「……わかった。ベースは俺がやる」
悟「うん、りょーかい。まなちゃんにもよろしくね」
留依がギターケースを背負って部室から出てくる。
留依「ねえ凛太郎、さっきの子って彼女? 派手でびっくりしちゃった」
悟「それ、留依さんに関係あります? 別にいいでしょ、どうでも」
留依「悟に訊いてないでしょ。早く帰れば?」
悟「まなちゃんが派手なのは見た目だけですよ。留依さんよりはずっとマシでしょ」
凛太郎(それは俺のセリフだろ)
留依「なにそれ、どういう意味?」
悟「自分で考えてください。じゃ、お先です」
悟、サークル棟を出ていく。
凛太郎(どうして悟に言われないといけないんだ。おまえが、まなのなにを知ってるっていうんだ)
留依「なんなのあれ、感じ悪い。ちょっと可愛い顔してるからって」
凛太郎「すいません、俺もバイトあるんで」
留依「悟って、凛太郎の彼女が好きなのかな。奪われちゃったら、どうする?」
留依、凛太郎の腕にそっと触れる。凛太郎が思いきり振り払う。
凛太郎「知らないですけど、そんなことは絶対にないです」
留依「絶対に? じゃあ、凛太郎が他の女の子を好きになることも、絶対にないの?」
凛太郎「ないです」
留依「ふうん、つまんないの」
留依、凛太郎の腕を強く引っ張って頬にキスをする。凛太郎、飛び退いて留依を睨みつける。
留依「そんな顔して、女慣れしてないの? かわいー」
凛太郎、頬を強く擦る。留依、凛太郎に微笑みかけ、サークル棟の廊下を歩いていく。