甘苦とコンプレックス・ラブ
#8 互いの想い
〇授業終了後、凛太郎の家
まな、怒りながら部屋の中を片づけている。そんなまなを、凛太郎は立ったままぼんやり見つめている。
まな「もう、また部屋散らかってる。片付けできなさすぎじゃない?」
凛太郎(ああ、今日もめちゃくちゃ可愛い。俺たち、ケンカしてたはずなのにな)
凛太郎、まなとのLINE画面を回想している。
凛太郎(昼前に届いたまなからのLINEに、俺は思わず目を疑った)
〇凛太郎の回想。昼休み、大学の食堂にて
凛太郎、友人の夏樹(なつき)と昼食を摂っている。スマホ片手に顔を赤くしている。
夏樹「なにニヤニヤしてんだよ。彼女から連絡でも来たのか?」
凛太郎「ま、まあ……」
夏樹「さっきまでわかりやすく落ち込んでたくせに」
凛太郎、まなに返信を打っている。
凛太郎「じゃあ、うち来る?」
まな「うん」
夏樹「あーあ、デレデレしちゃって」
夏樹「3講は無理だけど、しょうがないから4講は代返しといてやる。今度、学食の牛丼奢れよ」
〇回想終了、凛太郎の家
まな、相変わらず片付けをしている。
凛太郎(あの言い方はさすがにまずかったよな。だけど)
凛太郎(頼むから、もっと自覚してくれよ)
まな「いつもこんなに散らかしてるの? もう」
凛太郎(ああ、可愛いな)
まな「ねえ、聞いてる?」
まなが振り返る。凛太郎、リップでつやつやしているまなの唇にドキッとする。
凛太郎(変な気持ちになるから、当分家に呼ぶのはやめておこうと思ってたのに)
凛太郎、ベッドに腰を下ろす。
凛太郎「まな、座れば? こっち」
まな、少し迷うが、凛太郎から少し距離を空けて腰を下ろす。
凛太郎「その、先週……電話で、ごめん」
まな「えっ」
凛太郎「言い過ぎた。悪かった」
まな「凛太郎が、こんなに素直に謝るなんて」
凛太郎「なんだよその言い方」
まな「だって」
まながくすくす笑う横顔にまたドキッとする凛太郎、慌てて目を逸らす。
まな「凛太郎、あのね」
まなが少し距離を詰める。
凛太郎「えっと……凛太郎は、わたしの見た目がそんなに嫌?」
まな、凛太郎の手に自分の手を重ねる。凛太郎がまなの方を向くと、胸元が目に飛び込んできて思わず固まってしまう。
まな「ねぇ、聞いてるの?」
凛太郎「聞いてるに決まってんだろ、あんまりこっち見るなよ」
凛太郎が再び目を逸らす。まな、イラっとする。
まな「凛太郎、感じ悪い」
凛太郎「……おまえ、本当に自分のことわかってないよな」
凛太郎、まなの手をぎゅっと握ってそのまま自分の方に引き寄せて抱きしめる。
凛太郎「嫌なわけじゃ、ないから」
凛太郎、耳元で囁くように言う。
まな「ほん、と?」
凛太郎「だけど、その、胸元とか……そんな簡単に見せるなよ。前にも言っただろ」
凛太郎、まなの目を見つめて言う。まな、言い返そうとする。
凛太郎「余計なことは言わなくていい。どうせおまえの独自オシャレ論があるんだろ」
凛太郎、再びまなを抱きしめる。
凛太郎「今日は、前みたいに乱暴にしないから」
凛太郎、至近距離で「まな」と名前を呼び、そのままキスをする。
まな「あの、凛太郎、待って……」
凛太郎「待たない」
凛太郎、まなをきつく抱きしめながら何度も角度を変えてキスをする。耳たぶを齧り、首筋にキスをする。
まな「あ、だめ、凛太郎……っ」
凛太郎「おまえの首筋、いい匂いする」
凛太郎(まなと、こんなことばかりがしたいんじゃない)
凛太郎(すぐに手を出してしまう自分が情けない、心からそう思ってる。だけど)
凛太郎、思わずまなの胸に触れてしまいそうになる。まなが驚いたように身を引く。
凛太郎「嫌?」
まな「嫌、じゃないけど……でも」
まな、俯いていたがパッと顔を上げる。凛太郎と目を合わせる。
まな「教えて、ほしいの。凛太郎は……わたしのこと、好き?」
凛太郎、まなに触れていた手を引っ込めてまなを見つめ返す。
凛太郎「そんなの……そうじゃなきゃ、付き合ってねえよ」
まな「言われてないからわかんない。ちゃんと、言ってよ」
まな(怯むなわたし。付き合っているのに気持ちがわからないなんて、そんなのすごく寂しいもの)
凛太郎、逡巡した後にまなの両頬を挟むように触れて額と額をくっつける。
凛太郎「まな、好きだ。……言ってなくて、ごめん」
凛太郎、そのままキスをする。
まな「わたしも、好き」
まな、凛太郎の胸に飛び込む。背中に腕を回す。
凛太郎、まなをベッドに押し倒してキスを続ける。
まな「待っ……やだ、恥ずかしい」
凛太郎「なにがだよ」
まな「だって、どんな顔していいかわかんない」
凛太郎、まなに涙目で見つめられて理性が飛びそうになる。
凛太郎「おまえは、そのままでいてくれたらいいから」
凛太郎、何度も深いキスを繰り返す。まなの服がどんどん乱れて、スカートやニットが捲れて肌が見えていることに気づく。
凛太郎(これ以上は……やばいかも。俺が)
本当に理性が飛びかけたところで、凛太郎が突然起き上がる。まなは呆気に取られて、不安そうな顔で凛太郎を見上げる。
まな「あの……わたし、なにかした?」
凛太郎「……別に」
まな「なにか……だめ、だった? それとも、変な顔、してたとか?」
凛太郎「そんなわけ、あるかよ」
凛太郎が真っ赤な顔でまなに向き直って、そのまま俯く。
凛太郎「まずいんだよ、これ以上は、その」
凛太郎「俺の理性が持たない。爆発しそう」
凛太郎の発言に、まなの顔が真っ赤に染まる。
まな「ご、ごめん」
凛太郎「どうしておまえが謝るんだよ」
まな「だって」
凛太郎「ああもう、さっさと離れろ。あっち行け。おかしくなる」
まな「なによその言い方。だいたいね、凛太郎はいつも」
凛太郎「うるせえな。……黙れよ、もう」
凛太郎、まなの顎を掬って優しくキスをする。唇が離れたのと同時に目が合って、お互いに笑う。
まな(もしかして)
まな(もしかして、こういうのがわたしたちらしい、のかな)
まな(「好き」っていう感情だけじゃ、説明できない。凛太郎のこと、もっと知りたい。いろんなことをしたい。これからも、一緒にいたい)
まな(付き合い始めてもうすぐ3ヶ月。わたしは初めて、凛太郎に近づけた気がした)
まな、怒りながら部屋の中を片づけている。そんなまなを、凛太郎は立ったままぼんやり見つめている。
まな「もう、また部屋散らかってる。片付けできなさすぎじゃない?」
凛太郎(ああ、今日もめちゃくちゃ可愛い。俺たち、ケンカしてたはずなのにな)
凛太郎、まなとのLINE画面を回想している。
凛太郎(昼前に届いたまなからのLINEに、俺は思わず目を疑った)
〇凛太郎の回想。昼休み、大学の食堂にて
凛太郎、友人の夏樹(なつき)と昼食を摂っている。スマホ片手に顔を赤くしている。
夏樹「なにニヤニヤしてんだよ。彼女から連絡でも来たのか?」
凛太郎「ま、まあ……」
夏樹「さっきまでわかりやすく落ち込んでたくせに」
凛太郎、まなに返信を打っている。
凛太郎「じゃあ、うち来る?」
まな「うん」
夏樹「あーあ、デレデレしちゃって」
夏樹「3講は無理だけど、しょうがないから4講は代返しといてやる。今度、学食の牛丼奢れよ」
〇回想終了、凛太郎の家
まな、相変わらず片付けをしている。
凛太郎(あの言い方はさすがにまずかったよな。だけど)
凛太郎(頼むから、もっと自覚してくれよ)
まな「いつもこんなに散らかしてるの? もう」
凛太郎(ああ、可愛いな)
まな「ねえ、聞いてる?」
まなが振り返る。凛太郎、リップでつやつやしているまなの唇にドキッとする。
凛太郎(変な気持ちになるから、当分家に呼ぶのはやめておこうと思ってたのに)
凛太郎、ベッドに腰を下ろす。
凛太郎「まな、座れば? こっち」
まな、少し迷うが、凛太郎から少し距離を空けて腰を下ろす。
凛太郎「その、先週……電話で、ごめん」
まな「えっ」
凛太郎「言い過ぎた。悪かった」
まな「凛太郎が、こんなに素直に謝るなんて」
凛太郎「なんだよその言い方」
まな「だって」
まながくすくす笑う横顔にまたドキッとする凛太郎、慌てて目を逸らす。
まな「凛太郎、あのね」
まなが少し距離を詰める。
凛太郎「えっと……凛太郎は、わたしの見た目がそんなに嫌?」
まな、凛太郎の手に自分の手を重ねる。凛太郎がまなの方を向くと、胸元が目に飛び込んできて思わず固まってしまう。
まな「ねぇ、聞いてるの?」
凛太郎「聞いてるに決まってんだろ、あんまりこっち見るなよ」
凛太郎が再び目を逸らす。まな、イラっとする。
まな「凛太郎、感じ悪い」
凛太郎「……おまえ、本当に自分のことわかってないよな」
凛太郎、まなの手をぎゅっと握ってそのまま自分の方に引き寄せて抱きしめる。
凛太郎「嫌なわけじゃ、ないから」
凛太郎、耳元で囁くように言う。
まな「ほん、と?」
凛太郎「だけど、その、胸元とか……そんな簡単に見せるなよ。前にも言っただろ」
凛太郎、まなの目を見つめて言う。まな、言い返そうとする。
凛太郎「余計なことは言わなくていい。どうせおまえの独自オシャレ論があるんだろ」
凛太郎、再びまなを抱きしめる。
凛太郎「今日は、前みたいに乱暴にしないから」
凛太郎、至近距離で「まな」と名前を呼び、そのままキスをする。
まな「あの、凛太郎、待って……」
凛太郎「待たない」
凛太郎、まなをきつく抱きしめながら何度も角度を変えてキスをする。耳たぶを齧り、首筋にキスをする。
まな「あ、だめ、凛太郎……っ」
凛太郎「おまえの首筋、いい匂いする」
凛太郎(まなと、こんなことばかりがしたいんじゃない)
凛太郎(すぐに手を出してしまう自分が情けない、心からそう思ってる。だけど)
凛太郎、思わずまなの胸に触れてしまいそうになる。まなが驚いたように身を引く。
凛太郎「嫌?」
まな「嫌、じゃないけど……でも」
まな、俯いていたがパッと顔を上げる。凛太郎と目を合わせる。
まな「教えて、ほしいの。凛太郎は……わたしのこと、好き?」
凛太郎、まなに触れていた手を引っ込めてまなを見つめ返す。
凛太郎「そんなの……そうじゃなきゃ、付き合ってねえよ」
まな「言われてないからわかんない。ちゃんと、言ってよ」
まな(怯むなわたし。付き合っているのに気持ちがわからないなんて、そんなのすごく寂しいもの)
凛太郎、逡巡した後にまなの両頬を挟むように触れて額と額をくっつける。
凛太郎「まな、好きだ。……言ってなくて、ごめん」
凛太郎、そのままキスをする。
まな「わたしも、好き」
まな、凛太郎の胸に飛び込む。背中に腕を回す。
凛太郎、まなをベッドに押し倒してキスを続ける。
まな「待っ……やだ、恥ずかしい」
凛太郎「なにがだよ」
まな「だって、どんな顔していいかわかんない」
凛太郎、まなに涙目で見つめられて理性が飛びそうになる。
凛太郎「おまえは、そのままでいてくれたらいいから」
凛太郎、何度も深いキスを繰り返す。まなの服がどんどん乱れて、スカートやニットが捲れて肌が見えていることに気づく。
凛太郎(これ以上は……やばいかも。俺が)
本当に理性が飛びかけたところで、凛太郎が突然起き上がる。まなは呆気に取られて、不安そうな顔で凛太郎を見上げる。
まな「あの……わたし、なにかした?」
凛太郎「……別に」
まな「なにか……だめ、だった? それとも、変な顔、してたとか?」
凛太郎「そんなわけ、あるかよ」
凛太郎が真っ赤な顔でまなに向き直って、そのまま俯く。
凛太郎「まずいんだよ、これ以上は、その」
凛太郎「俺の理性が持たない。爆発しそう」
凛太郎の発言に、まなの顔が真っ赤に染まる。
まな「ご、ごめん」
凛太郎「どうしておまえが謝るんだよ」
まな「だって」
凛太郎「ああもう、さっさと離れろ。あっち行け。おかしくなる」
まな「なによその言い方。だいたいね、凛太郎はいつも」
凛太郎「うるせえな。……黙れよ、もう」
凛太郎、まなの顎を掬って優しくキスをする。唇が離れたのと同時に目が合って、お互いに笑う。
まな(もしかして)
まな(もしかして、こういうのがわたしたちらしい、のかな)
まな(「好き」っていう感情だけじゃ、説明できない。凛太郎のこと、もっと知りたい。いろんなことをしたい。これからも、一緒にいたい)
まな(付き合い始めてもうすぐ3ヶ月。わたしは初めて、凛太郎に近づけた気がした)