未来へ進む三つの絆

第9章：「カップルとしての一歩」

第9章：「カップルとしての一歩」

沙樹と修が正式にカップルとなった次の日、学校の教室はどこか違った雰囲気に包まれていた。沙樹は少し緊張しながら教室に入った。修との関係が変わったことで、自分が周りからどう見られているのか、少し不安があったのだ。しかし、修はいつも通りの優しい笑顔で沙樹を迎え、「おはよう」と声をかけてくれた。

「お、おはよう、修くん……。」

沙樹は少し照れながら返事をした。修は沙樹の緊張を和らげるように微笑み、自然に手を差し出した。沙樹は一瞬戸惑ったが、教室の中でその手を取る勇気を持ち、そっと手を握った。修の手の温かさが、沙樹に安心感を与えた。

「大丈夫、僕たちは僕たちのペースでいこう。」

修は沙樹の耳元でそっとそう囁いた。その言葉に、沙樹は肩の力が抜け、心の中に少しずつ余裕が戻ってくるのを感じた。彼と一緒にいられること、それが何よりも大切だと改めて思った。

昼休み、二人はいつものように図書室で過ごすことにした。しかし、今日は何かが違った。カップルとして初めて一緒に過ごす時間——その新鮮な感覚に、沙樹の心は高鳴っていた。

「沙樹、何か読みたい本はある？」

修が優しく尋ねると、沙樹は少し考えてから一冊の恋愛小説を手に取った。それは以前から気になっていた本で、修と一緒に読んでみたいと思っていたものだった。

「これ、読んでみようかな。修くんと一緒に読んだら、もっと楽しいかもって思って……。」

沙樹は恥ずかしそうにそう言ったが、修は優しい目で沙樹を見つめ、「いいね、僕も一緒に読みたい」と微笑んだ。その言葉に、沙樹の胸は「きゅん」と締め付けられるような感覚に包まれた。

二人はその恋愛小説を開き、一緒にページをめくりながら読み進めた。物語の中で登場人物たちが恋に悩み、成長していく姿が描かれていて、沙樹はまるで自分たちのことのように感じてしまった。修もまた、時折沙樹の顔を見つめ、彼女がどんな感情を抱いているのかを感じ取ろうとしていた。

「沙樹、このシーン……ちょっと似てない？僕たちに。」

修が微笑みながら指差したページには、主人公たちが初めて気持ちを伝え合う場面が描かれていた。沙樹は頬を赤らめながら、静かに頷いた。

「うん……私たちも、こんな風に正直に気持ちを伝え合えたから、今こうして一緒にいられるんだよね。」

沙樹はそう言って修を見つめた。その瞳の中に映る修の姿は、彼女にとって何よりも大切で、愛おしい存在だった。修もまた、沙樹の手を握り返し、そっと微笑んだ。

「沙樹がいてくれるから、僕も強くなれるんだ。これからも一緒に、たくさんのことを経験していこうね。」

その言葉に、沙樹は心からの笑顔を見せた。二人の間にある絆がさらに深まり、これからも共に歩んでいく未来がより輝かしいものに感じられた。

その日の帰り道、美咲が校門の前で待っていた。彼女は沙樹に向かって微笑みかけ、「沙樹ちゃん、少し話せる？」と声をかけた。修は少し心配そうに沙樹を見つめたが、沙樹は「大丈夫」と言って美咲の方に歩み寄った。

「美咲ちゃん、どうしたの？」

美咲は少しためらった後、沙樹をまっすぐに見つめて言った。「沙樹ちゃん、修くんと付き合うことになったんだね。本当におめでとう。私、最初はちょっと複雑だったけど……沙樹ちゃんが一生懸命自分の気持ちに向き合ってるのを見て、応援したいと思ったんだ。」

その言葉に、沙樹は胸が熱くなった。美咲もまた、自分の気持ちと向き合ってくれていたのだと知り、彼女への感謝の気持ちが湧き上がった。

「ありがとう、美咲ちゃん。私も、これからもずっと友達でいてくれたら嬉しいな。」

美咲は微笑みながら頷き、「もちろんだよ。沙樹ちゃん、これからも一緒に頑張ろうね」と言った。その言葉に、沙樹は心からの安堵を感じた。そして、修の元へ戻りながら、沙樹は新しい一歩を踏み出したことを実感していた。