未来へ進む三つの絆

第14章:「心の壁を越えて」


ボランティア活動を続ける中で、沙樹は様々な経験を積んでいった。子どもたちとのふれあいや、他のボランティアスタッフとの交流を通じて、沙樹は次第に自分の役割を見つけ、自信を持つようになっていた。しかし、そんな中で、ある出来事が沙樹の心に新たな挑戦を与えた。

その日はいつも通り児童館でのボランティア活動をしていた。元気いっぱいの子どもたちと遊ぶ中、一人の男の子がふと沙樹から離れてしまった。彼は物静かで、あまり周りと関わろうとしない子だった。沙樹はその子のことが少し気になっていたが、どう声をかけたらいいか分からずにいた。

「どうしよう……」

沙樹は一瞬迷ったが、思い切ってその子に近づいた。「こんにちは、一緒に遊ばない?」沙樹の優しい声掛けにも、男の子はうつむいたまま何も言わなかった。それでも沙樹は諦めず、その子の隣に座り、しばらく一緒に静かに過ごすことにした。

数分が過ぎたころ、男の子が小さな声で「……お姉ちゃん、絵、描ける?」と話しかけてきた。沙樹はその言葉に驚きながらも、心の中で嬉しさが湧き上がった。「もちろんだよ。一緒に描こうね。」沙樹は笑顔でそう答え、二人で紙と色鉛筆を広げて絵を描き始めた。

その子が少しずつ笑顔を見せるようになったことに、沙樹は胸がいっぱいになった。人と心を通わせることの難しさと、その先にある喜びをこの瞬間に感じ取った。福祉の仕事に興味を持った理由——それはまさにこうした瞬間、人の心に寄り添い、少しでも幸せを共有することだった。

その日の帰り道、沙樹は修にその話を嬉しそうに語った。「あの子が笑ってくれたとき、本当に嬉しかったの。少しでも心を開いてくれたんだって思えて……やっぱり私、この道に進みたいな。」

修は沙樹の話を真剣に聞きながら、「沙樹、本当にすごいよ。君の優しさがきっとたくさんの人の心を癒していくと思う。僕も君の夢を全力で応援するよ」と言ってくれた。その言葉に、沙樹は心が温かくなり、修と共に歩んでいく未来をますます楽しみに感じた。

学校生活でも、沙樹と修の関係はますます深まっていた。昼休みに一緒に図書室で勉強をしたり、時には学校の屋上で一緒に夕陽を眺めたり——そんな日常の一つ一つが二人にとって特別な時間だった。

ある日、修は沙樹に「僕たちで何か一緒にできるプロジェクトをやってみない?」と提案した。沙樹は驚きながらも興味をそそられ、「どんなことを考えてるの?」と尋ねた。修は、「例えば、ボランティア活動を学校のみんなにも広めるためのイベントを企画するとか。沙樹が福祉に興味を持ってるのを見て、もっとみんなにも知ってほしいなって思ったんだ」と笑顔で話した。

沙樹はその提案に感動し、「修くんとならきっと素敵なものが作れるね。一緒にやってみたい!」と答えた。二人は学校のみんなを巻き込んでボランティア活動のイベントを企画することを決め、次の週末から準備を始めることにした。

このプロジェクトを通して、二人はさらに強い絆を築き上げていくのだろうと沙樹は感じた。修と共に歩む未来が、ますます輝かしいものに思えた。そして美咲もまた、このプロジェクトに興味を持ち、二人を全力でサポートしてくれることを約束してくれた。

「沙樹ちゃん、私も一緒に手伝うよ。みんなで何か素敵なことを作り上げるって、ワクワクするね。」

美咲の言葉に、沙樹は心からの感謝を感じた。友情と愛情、そして新たな挑戦が沙樹の胸をいっぱいにし、これからの未来に向けてさらに前進する力を与えてくれた。
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