未来へ進む三つの絆

それから数日が経ち、沙樹は修との交流が増えていくのを感じていた。昼休みには図書室で一緒に過ごし、時には教室でも少しだけ会話を交わすようになった。沙樹にとって、こんな風に誰かとつながることは初めての経験で、毎日が新鮮で心が弾むようだった。

そんなある日、修は沙樹に少し特別な提案をした。「今日の放課後、ちょっと付き合ってほしいんだけど」と言われた瞬間、沙樹の心は跳ね上がった。放課後、一緒にどこかへ行くなんて想像もしていなかったからだ。

「え……私でいいの？」

沙樹は戸惑いながら尋ねたが、修はにこりと笑って、「もちろん、君だから誘うんだよ」と言った。その言葉に沙樹は顔を真っ赤にしながらも、頷いて了承した。

放課後、修は沙樹を連れて学校から少し離れた公園へ向かった。その公園は、沙樹があまり行ったことのない場所だったが、自然が豊かで静かで、まるで秘密の場所のように感じられた。夕方の柔らかな光が木々の間を通り抜け、二人の影を長く引き伸ばしていた。

「ここ、僕のお気に入りの場所なんだ。」

修はそう言って、公園の奥にあるベンチに沙樹を案内した。沙樹はその場所の静けさと美しさに心を奪われた。ベンチに座ると、風が心地よく吹き抜け、周りの木々の葉がささやくように音を立てた。

「修くん、こんな素敵な場所、知ってたんだね……」

沙樹は感嘆の声を漏らしながら、修に向けて微笑んだ。修も同じように微笑み返し、「なんか、沙樹に見せたくてさ。君と一緒にここに来ると、もっと特別に感じるんだ」と言った。

その言葉に、沙樹は胸がいっぱいになった。自分のことをそんな風に思ってくれる人がいるなんて、信じられない気持ちだった。修は沙樹の方を見つめ、その瞳には真剣な光が宿っていた。

「僕、沙樹といるとすごく落ち着くんだ。今まで、こんな風に誰かと一緒にいて安心できるって、思ったことなかったんだよね。」

修の言葉は、沙樹の心にまっすぐ届いた。自分と同じように、修も誰かに対して不安や孤独を感じることがあったのだと思うと、彼が一気に身近に感じられた。そして、その感情を自分に向けてくれていることが、沙樹にはとても嬉しかった。

「私も……同じだよ。修くんといると、不思議と安心するの。」

沙樹は小さな声でそう答えた。修は嬉しそうに微笑み、二人の間に流れる穏やかな空気が、何も言わなくても心を通わせているように感じられた。

日が暮れ始め、空がオレンジ色に染まる中、修はふと立ち上がり、「もう少し歩こうか」と沙樹に手を差し出した。沙樹はその手を見つめ、一瞬ためらったが、すぐにその手を取った。修の手は暖かくて、沙樹の不安な気持ちを和らげるようだった。

公園を歩きながら、二人は何でもない話を続けた。学校のこと、好きな本のこと、未来の夢のこと。修は時折、沙樹のことを気遣うように見つめ、その優しさが沙樹にはたまらなく心地よかった。

「いつか、もっとたくさんの場所を君に見せたいな。」

修がそう言ったとき、沙樹は胸の中が暖かく満たされるのを感じた。修と一緒なら、どんな場所でも特別な場所になる。そんな風に思える自分が、少しだけ誇らしかった。

やがて、公園を出る頃には空には星が輝き始めていた。沙樹と修は並んで歩きながら、ゆっくりと家路に向かった。修の隣にいると、沙樹の中のコンプレックスが少しずつ溶けていくようだった。まるで、自分が誰かにとって必要な存在になれたような気がして——沙樹の胸には、新しい希望の光が灯り始めていた。