未来へ進む三つの絆
第4章:「一歩踏み出す勇気」
翌朝、沙樹は鏡の前でそっと自分の姿を見つめた。昨日の放課後の出来事がまるで夢のようで、胸の中にまだふわふわとした温かさが残っていた。修と一緒に過ごした公園での時間、手を繋いで歩いた感触——それらが何度も頭をよぎり、頬が自然と熱くなった。
「私、変わりたいな……」
沙樹は小さな声でつぶやいた。修と一緒にいると、自分が少しずつ変わっていくのを感じる。これまで他人と関わるのが怖くて、自分に自信が持てなかったけれど、修がいることで少しずつ前向きになれる気がしていた。もっと強くなりたい。もっと修と一緒に笑いたい。そのために、少しでも自分を変えてみようと決意した。
学校に着くと、沙樹はいつものように教室に向かった。しかし、今日はいつもと違うことをしようと心に決めていた。教室に入ると、沙樹は修の姿を見つけて、思い切って自分から声をかけることにした。
「おはよう、修くん。」
自分の声が少し震えているのが分かった。それでも沙樹は笑顔を浮かべた。修は驚いたように目を見開いたが、すぐに嬉しそうに微笑んで「おはよう、沙樹」と返してくれた。その笑顔を見て、沙樹の緊張は一気に解けた。
その日の昼休みも、二人は図書室で過ごした。修は沙樹の隣に座り、今日もまた話をする。沙樹は修の話を聞くのが大好きだった。彼が楽しそうに話す姿を見ているだけで、自分も幸せな気持ちになれた。
「ねえ、沙樹。今度の日曜日、空いてる?」
突然の修の問いかけに、沙樹は驚きながらも頷いた。日曜日に修と会うなんて考えたこともなかったが、彼の誘いに断る理由は全くなかった。むしろ、心の中で喜びが膨らんでいくのを感じた。
「良かった。実はさ、前に話してた新しい本屋さんに一緒に行きたいなって思ってたんだ。沙樹なら、絶対楽しんでくれると思って。」
修の言葉に、沙樹の胸がドキドキと高鳴った。本屋——それは沙樹にとって特別な場所だ。静かな空間で好きな本に囲まれるのは、彼女の安らぎであり、心の拠り所だった。そんな場所に修と一緒に行けるなんて、沙樹にとって夢のような話だった。
「うん、行きたい。私も新しい本屋さん、すごく気になってたんだ。」
沙樹は自然と笑顔になり、修もまたその笑顔に応えるように微笑んだ。こうして、二人は次の日曜日に会う約束をした。沙樹にとって、それは新たな一歩を踏み出す勇気の象徴でもあった。
日曜日、待ち合わせの場所に向かう道中、沙樹は少し緊張していた。修との初めての「デート」——そんな風に考えると、胸の鼓動が止まらない。けれど、修と一緒ならきっと楽しい時間になる。そう信じて、沙樹は足を進めた。
待ち合わせ場所に着くと、修は既に来ていて、沙樹を見つけると大きく手を振った。その姿を見て、沙樹は自然と笑顔になった。そして、その瞬間、彼女は自分が少しずつ変わっていることを実感した。修と過ごす時間が、自分にとってかけがえのないものになりつつあることを、沙樹は心から感じていた。
「行こうか、沙樹。」
修が手を差し出し、沙樹はその手を取った。暖かい手の感触に安心しながら、二人は新しい本屋へと向かって歩き出した。沙樹の胸の中には、今までにない希望と喜びが満ちていた。それは、修との絆が少しずつ深まっている証でもあった。