未来へ進む三つの絆

第5章：「本屋でのきらめき」

第5章：「本屋でのきらめき」

日曜日の午後、修と沙樹は新しくオープンした本屋へとやって来た。その本屋は街の片隅にあり、外観からしてどこか温かみのある雰囲気が漂っていた。古い木材でできたドアを開けると、心地よいベルの音が店内に響いた。沙樹はドキドキしながら中に足を踏み入れ、目の前に広がるたくさんの本に息をのんだ。

「わあ……すごい。」

本屋の中は、木の棚にぎっしりと並んだ本でいっぱいだった。小説、詩集、絵本、趣味の雑誌——どれも一冊一冊が手に取るたびに心を豊かにしてくれそうなものばかりだった。沙樹は修の横で目を輝かせ、あちらこちらの本棚を見て回った。

「沙樹、こっちも見てみて。」

修が声をかけ、沙樹をある本棚に案内した。その本棚には、修が好きだと言っていた作家の作品が並んでいた。修は一冊の本を手に取り、その表紙を優しく撫でた。

「これね、僕が前に言ってたやつ。君も気に入ると思うよ。」

沙樹は修の持つ本を見つめ、その表情から修のその作品への思い入れを感じ取った。修が自分におすすめしてくれるもの——それがどれほど特別なことか、沙樹は心の中で強く感じた。彼の好きなものを共有することで、自分も彼にもっと近づける気がした。

「ありがとう。ぜひ読んでみたいな。」

沙樹はにっこりと微笑んで、その本を受け取った。修はその様子を見て嬉しそうに頷いた。そして二人は本棚の間を一緒に歩きながら、お互いに好きな本について話し始めた。

「沙樹は、小説を読むときどんな気持ちになる？」

修がふと問いかけた。沙樹は少し考えてから答えた。

「うーん……物語の中に入っていく感じかな。現実の自分を忘れて、別の世界で新しい自分になれる気がするの。だから、小説を読むのが好きなのかもしれない。」

沙樹の言葉に修は深く頷き、「そういうところ、僕も好きだな」と返した。二人はお互いの感性が通じ合うのを感じ、ほんの少しの間、静かに見つめ合った。その瞬間、沙樹の胸は温かさで満たされ、修に対する思いがますます強くなっていくのを感じた。

その後、沙樹はお気に入りの詩集を見つけて、それを修に見せた。

「これ、私がずっと読みたかった詩集なんだ。前から探してて、やっと見つけたの。」

修は興味深そうにその詩集を手に取り、ページをめくった。そして、ふと一編の詩を読み上げた。その声は静かで、店内の静けさに溶け込むように響いた。

「すごく素敵な詩だね。沙樹が好きだっていうの、分かる気がするよ。」

修がそう言って微笑むと、沙樹は胸が「きゅん」と締め付けられるような気持ちになった。修が自分の好きなものを理解してくれること、そのことがとても嬉しかった。そして、その瞬間、自分がどれだけ修を大切に思っているかを改めて実感した。

二人はお気に入りの本を手に取り、レジで会計を済ませた。外に出ると、すでに夕方になりかけていて、空はオレンジ色に染まっていた。修は本屋を後にする沙樹を見て、ふと声をかけた。

「今日はありがとう。沙樹と一緒に本を探せて、本当に楽しかった。」

沙樹は少し恥ずかしそうに微笑みながら、「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。すごく楽しかったよ」と返した。その言葉に修はさらに微笑んで、沙樹の手を軽く握った。

「また、一緒に来ようね。」

修のその言葉に、沙樹は大きく頷いた。彼の手の暖かさが、彼との未来を少しずつ照らしてくれるように感じられた。二人の心の距離が、また少し近づいたことを実感しながら、沙樹は修と並んで歩き出した。