未来へ進む三つの絆

第6章:「揺れる心」

第6章:「揺れる心」

本屋からの帰り道、沙樹は修と並んで歩きながら、自分の心が大きく揺れているのを感じていた。彼と一緒にいると、何もかもが新鮮で、胸が高鳴る。こんな気持ちは初めてで、どうしていいのか分からないまま、ただ心に芽生えた想いに戸惑っていた。

「ねえ、沙樹。」

修がふと声をかけてきた。夕暮れの光に包まれた彼の横顔は、どこか切なく、でも優しさがにじんでいた。

「何、修くん?」

沙樹はその声に耳を傾け、少し緊張しながら返事をした。修は一瞬黙った後、少し迷うように言葉を選びながら話し始めた。

「沙樹と一緒にいると、すごく心が安らぐんだ。こんな気持ちになれるなんて、自分でもびっくりしてる。でも……だからこそ、時々怖くなるんだよね。僕にとって、君がどんどん大切になっていくのが。」

修の言葉に、沙樹の胸が大きく跳ねた。彼の真剣な表情を見つめながら、彼が自分に対してそんなに深い思いを抱いていることに驚いた。そして同時に、彼にとって自分が特別な存在になりつつあるということが嬉しくてたまらなかった。

「私も……修くんといると、本当に安心するの。こんな風に誰かと気持ちを共有できるなんて、私も思ってなかったから。」

沙樹は精一杯の気持ちを込めてそう言った。修の目に少しだけ涙が浮かんでいるのが見えた。それは、彼がどれだけ心を開いてくれているかの証でもあった。

「ありがとう、沙樹。君がそう言ってくれて、本当に嬉しいよ。」

修は沙樹の手を握り、その温かさが沙樹の心を穏やかにした。二人はしばらく何も言わず、ただ手をつないだまま歩き続けた。言葉はいらなかった。その瞬間、二人の間には確かに何かが生まれていた。目に見えないけれど、確かな絆が。

数日後、学校での昼休み、沙樹は図書室で修を待っていた。心の中では、あの日からずっと修のことを考え続けていた。彼ともっと一緒にいたい、彼のことをもっと知りたい——そんな思いが次第に強くなっていくのを感じていた。

やがて、修が図書室に入ってきて、沙樹の隣に腰を下ろした。彼はにこりと微笑んで、「待たせたかな?」と尋ねた。

「ううん、大丈夫だよ。」

沙樹は笑顔で答えたが、胸の中の鼓動は早くなるばかりだった。修といると、自分の心がどんどん修に向かって開いていくのが分かる。これまで自分が持っていたコンプレックスや不安も、彼の前では少しずつ消えていくようだった。

「沙樹、これ見てほしいんだ。」

修は鞄から一冊のノートを取り出した。それは彼が日々の出来事や感じたことを書き留めているものだった。沙樹に見せるのは初めてのことで、修にとっても大きな勇気が必要だったようだ。

「え、これ……修くんの日記?」

沙樹は驚いたように修の顔を見つめた。修は少し照れくさそうに頷き、「君にだけ見せたいと思ったんだ」と言った。その言葉に、沙樹の心はまた大きく揺れた。彼が自分に心を開いてくれること、それがどれほど特別なことか、沙樹にはよく分かっていた。

「ありがとう……私、すごく嬉しいよ。」

沙樹はノートを受け取り、丁寧にページをめくった。修が書いた文字は、どれも丁寧で、そこには彼の真剣な思いが込められているのが感じられた。その一つ一つの言葉が、沙樹の心に深く染み込んでいった。

修の気持ちに応えるために、自分ももっと素直になりたい——沙樹はそう強く思った。これからも修と一緒に歩んでいきたい。そのためには、今の自分を少しずつ乗り越えていかなければならない。彼のことを大切に思う気持ちを、もっと伝えたいと沙樹は心から願った。

「これからも、たくさん話して、たくさん一緒に過ごそうね。」

沙樹がそう言うと、修は優しく微笑んで頷いた。二人の間には、以前よりも強く、そして深い絆が芽生えていた。その絆が、これからも二人を支え続けてくれると信じて、沙樹は修の隣で静かに微笑んだ。

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