〜Midnight Eden〜 episode1.【春雷】
愁は悠々とソファーにふんぞり返る男に視線を移した。部下と女が次々と殺されていく様子を男は他人事のように傍観している。
『あんたが岸田博正か』
『お前どこの組のものだ?』
『こちらの所属を名乗る必要はない。あんたの金づるが差し出した金がうちの貸金庫から持ち出された金だったものでね』
岸田博正は底意地の悪い笑みを浮かべて呑気に煙草をふかしていた。
『どこの金だろうが知ったことじゃない。そんなんで殺されてちゃ、命がいくつあっても足らねぇな』
『俺もあんたは巻き添え食らった側だと思ってる』
馬鹿な銀行員がレイヴンが運営する闇金融の支払いに夏木の金をあてがわなければ、そもそも夏木から殺害命令が下ることもなかった。
『同情されてもなぁ。これだけ派手にやってくれた落とし前をどうやってつけるつもりだ?』
『俺もこれが仕事だ。あんたには悪いが、遂行させてもらう』
背後の気配にはとっくに気付いていた。取り巻き二人を始末した直後から部屋にいた岸田の息子の姿が消えている。
こちらを睨み付ける岸田の視線が動いた瞬間、愁は岸田に向けていた銃口を後ろに向けた。ガラスの灰皿を愁の後頭部めがけて振り下ろそうとしていた岸田の息子、達磨《たつま》の腹部が裂ける音が響く。
腹部を撃たれて呻き声をあげる達磨の息の根を止めている隙に、裏口への逃亡を図ろうとした岸田を愁は逃がさない。達磨を殺した流れで岸田の太ももに狙いを定め、トリガーを引く。
足を撃たれて床に転倒した岸田を追い詰める愁。這いつくばる岸田の太ももを流れ出る血が灰色の床を汚した。
『息子を囮にして自分だけ逃げようだなんて、ひでぇ父親だな』
銃から排出された七つ目の薬莢《やっきょう》が甲高い音を立てて落ちた。これで殺した人数は五人。
部屋に入った時は四人の男と二人の女がいたが、もうひとりの女がいない。
裏口から逃亡しようとしても待機している部下が逃亡を阻止する。女はまだこの部屋のどこかにいるはずだ。
『あんたが岸田博正か』
『お前どこの組のものだ?』
『こちらの所属を名乗る必要はない。あんたの金づるが差し出した金がうちの貸金庫から持ち出された金だったものでね』
岸田博正は底意地の悪い笑みを浮かべて呑気に煙草をふかしていた。
『どこの金だろうが知ったことじゃない。そんなんで殺されてちゃ、命がいくつあっても足らねぇな』
『俺もあんたは巻き添え食らった側だと思ってる』
馬鹿な銀行員がレイヴンが運営する闇金融の支払いに夏木の金をあてがわなければ、そもそも夏木から殺害命令が下ることもなかった。
『同情されてもなぁ。これだけ派手にやってくれた落とし前をどうやってつけるつもりだ?』
『俺もこれが仕事だ。あんたには悪いが、遂行させてもらう』
背後の気配にはとっくに気付いていた。取り巻き二人を始末した直後から部屋にいた岸田の息子の姿が消えている。
こちらを睨み付ける岸田の視線が動いた瞬間、愁は岸田に向けていた銃口を後ろに向けた。ガラスの灰皿を愁の後頭部めがけて振り下ろそうとしていた岸田の息子、達磨《たつま》の腹部が裂ける音が響く。
腹部を撃たれて呻き声をあげる達磨の息の根を止めている隙に、裏口への逃亡を図ろうとした岸田を愁は逃がさない。達磨を殺した流れで岸田の太ももに狙いを定め、トリガーを引く。
足を撃たれて床に転倒した岸田を追い詰める愁。這いつくばる岸田の太ももを流れ出る血が灰色の床を汚した。
『息子を囮にして自分だけ逃げようだなんて、ひでぇ父親だな』
銃から排出された七つ目の薬莢《やっきょう》が甲高い音を立てて落ちた。これで殺した人数は五人。
部屋に入った時は四人の男と二人の女がいたが、もうひとりの女がいない。
裏口から逃亡しようとしても待機している部下が逃亡を阻止する。女はまだこの部屋のどこかにいるはずだ。