〜Midnight Eden〜 episode1.【春雷】
「変な質問しちゃうんだけどいい?」
『んー、なに?』
「涼太くんの家、再婚して今は若いお母さんがいるって言ってたよね。お父さんと後妻さんはセックスしてるのかな?」

 一瞬の間の後の、彼の苦笑いは予想通りだった。両親の性事情を聞かれたら誰もが紺野と同じ反応をするだろう。

『すっげぇこと突っ込んでくるね』
「気を悪くしちゃったらごめんね」
『別にいいよ。まぁ……たまに寝室から喘ぎ声聞こえてくるし、風呂でも仲良くヤってる』
「そっかぁ。後妻さんいくつ?」
『えーっと……確か三十の前半。楓さんより年上だよ』

 紺野の父親は彼の年齢を考えても四十代後半から五十代。そのくらいの年の男になら、女は三十代になっても求めてもらえるの?
三十代の女は夫に求められているのに、どうして二十代の自分は……。

『俺はそういうのに敏感な年齢は過ぎたし構わないけど、妹は思春期だからさ。父さんが男の顔してるとこは見せたくないんだよね』
「涼太くんは妹さん想いだよね」

紺野には高校生の妹がいる。彼が語る話題の半分は妹の話だ。
引っ込み思案な性格で友達ができにくい妹の学校生活を、紺野はいつも心配していた。

「涼太くんと妹さんにとっては複雑な環境だけど、私は後妻さんが羨ましい。旦那に求めてもらえて……」
『旦那さんとは相変わらずレスってるの?』
「うん。先月も今月も一回もしてない」

 結婚2年目になっても結婚後の夫婦の営みの回数は二桁もない。楓は世間で言われる“レスられ妻”だ。

『こんなに可愛くて優しくて、胸もでかくて色っぽい身体の奥さんがいるのに抱かないなんて。俺だったら我慢できずに毎晩抱いてる』
「ふふっ。夫が涼太くんみたいな人なら良かったのにね」

 元々、夫は性に淡白な男だった。交際当時から身体の繋がりを重視しない彼に苛立ちを感じてもいた。
一緒のベッドで寝ても時には一緒に風呂に入っても、夫は楓の身体に欲情しない。

勃たない病気なのではと疑ったが、楓が誘った時にはちゃんと男の機能を果たしている。
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