今夜だけのはずが極上の彼に愛されて


「紅羽ちゃん。ごめん、急かしてないから」

不安が顔に出てしまっていたようだ。

「ゆっくりでいいから。俺を見てよ」

こんなぬるま湯に浸かるみたいな…
いいのかな…

「でも俺、好きな子前にして我慢できる程大人じゃないんだよね」

え…

「今日は抱くつもりなかったんだけど…」

そう言って立ち上がると私のところまで来てかがみ、顔を近くで覗き込まれる。

「可愛がりたくなっちゃったな」

バリトンボイスの甘い囁きが私の鼓膜を震わせる。

そしてキスが落とされ、次第に深まってくれば脳まで溶かされそうな感覚がしてくる。

この誘惑に抗えない。

手を取られ、自分の口元へと運び私を熱のこもった瞳で見つめながら手の甲にキスを落とすその姿を見て、全身にビリビリと電撃のようなものが駆け巡る。

私はもう既に抜け出せない所まで来てしまったのかもしれない。
そう思った。
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