今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「そうですか。わかっていただけましたか」

パッとネクタイを離す。

「あ、ああ。でも取引は…」

ネクタイを直しながらバカな事を言う九条。

「はい? そちらが言ったんでしょう? 先に」

「いや、それは…」

「うちは正直言って何も痛手はございませんので。あとはお引き取りください。そちらの社長には報告しておりますので。あとはご家族で話してください」

「言うなと言ったじゃないか! 話が違うぞ!」

「警察には、ですよね?」

するとガクっと膝から崩れ落ちるように九条は目の前で項垂れ髪の毛をぐしゃぐしゃしている。

俺はしゃがみ九条に笑いかける。

「これ以上俺の邪魔するなら、本当に警察呼んじゃうよ?」

するとボサボサの頭で俺を見てきた。

「お前…、猫かぶってやがったな?」

「どう思ってもらっても構いませんが…。俺の妻に手を出したのが間違いでしたね。早く俺の前から消えて欲しいな」
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