今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
俺はしゃがんだまま、膝に肘をついてそこに顔を乗せる。
早く失せろよと思いながら。
俺を睨んだまま動かない九条。
本当バカなのか? まだ抵抗する気か?
俺は目の前で携帯を出して警察の番号を出して見せる。
「3…2…
勝手にカウントダウンをすれば、慌てたように立ち上がりつまづきそうになりながら俺の部屋から逃げるように走り去って行った。
「悪かった!」
最後に廊下から九条のそんな声が聞こえた。
するとヒョコっと紅羽が顔を覗かせる。
げ。
「今の、本当?」
「あー…うん。ごめんね紅羽ちゃん」
せっかく紅羽は自分を犠牲にしてまで…
すると紅羽は持っていた荷物をドサっと置くと、俺に飛びついてきた。
俺は慌てて抱き抱える。
「ちょっ…」
「……った」
「え?」
顔をうずめたまま何かを言っている。
「良かった!」
そして顔をガバッとあげて笑う紅羽を見て、俺は心底安心する。