今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
「紅羽。悪い。別れて欲しい」

すると隣に座っていた直人が私にそう言った。

「え…?」

「この子を放っておけない」

この子を放っておけない…?

話を聞けば、二人は少し前からどうやら付き合い始めたようだ。

私は浮気されていたようで、それなのに全く気づきもしなかった。

仕事が楽しくて。
直人の変化にも気付かなかった。

「紅羽先輩…ごめんなさい私…どうしても気持ちを抑えられなくてっ…」

そう言ってまた泣き出した雪ちゃん。

「雪。俺が放っておけなかったんだお前を」

直人は私にするように雪ちゃんの背中に手を回してさする。

「直人っ…」

見つめ合う二人を見て、その瞬間私はスーっと直人を想う気持ちが消えてなくなった。
< 5 / 288 >

この作品をシェア

pagetop