今夜だけのはずが極上の彼に愛されて
むしろ二人で勝手に幸せになってくれと思った。

「…わかった」

気づけば私はそんな事を口にしていた。

「え…それだけ?」

雪ちゃんが私を見て驚いている。

「あ…うん」

「紅羽はやっぱり強いな。お前は俺がいなくたって全然大丈夫だもんな」

は?

一瞬ピキっとこめかみに血管が浮いた。

でも、私は直人に結婚の話をされても断ったし、確かに直人がいなくても仕事も充実していて自分でも驚く程ダメージがないのは事実だ。

私は直人に無言のまま笑顔を送る。

「ありがとうな。ごめんな、勝手で」

それは本当そう。
でも、私も今思えばあまりちゃんと向き合えてなかった。

私はそのまま首を横に振った。

「私もごめんね。それじゃ」

そう言って私はその場から離れたのだった。
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