執拗に愛されて、愛して
何か色々言い出したらきりはないけど、そういう話は聞きたくない。

私、こんな事気にするタイプだったかな。

酔っているのかもしれない。

そう思いながら少し肌寒い夜道を1人で歩く。

朝暖かかったから油断してた。

上着を羽織らずに来てしまって少し身震いする。

ゆっくり歩んでいると「夏帆」と声をかけられて後ろを振り向く。


「あれ、雅。どうしたの?」


さっきまで仕事をしていた雅が、こっちに近付いてくると持っていた上着を羽織らせてくれた。


「何も言わずに帰るとかうちの彼女薄情だよな」


文句は言いながらもその声はかなり優しい。


「だって、接客してたし。」

「バカ、声かけられたらお前優先してたに決まってんだろ。声掛けろよ」


その言葉にうんと頷けなくて、目の前で立ち尽くすだけだった。
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