執拗に愛されて、愛して
「…わかった、わかったから」


そう言って溜息を吐いて生チョコを雅の口元に持っていくとパクっと食べている。

持っていかれたものは素直に食べるのね、餌付けしてる気分だわ。

少し可愛いなんて思ってしまった。


「ここに一緒に住む?それとも、あんたの部屋でもいいし、物件探してもいいし。」

「…素直すぎて怖いわ」


私の渾身の言葉をそんな風に返されて少しイラッとする。


「じゃあ同棲は無しでも良いけど」

「冗談じゃん」


不貞腐れる私に笑って私の頭に頬をつけてくっついてくる。

擽ったさに少し私も笑いそうになる。

大型犬にしがみつかれてるみたい。


「夏帆から同棲の話とか出ると思ってなかったからちょっと照れくさかったんだよ。」


こんなことでこんなに喜んでくれるなんて、こっちまで嬉しくなる。

本当に雅はまだ私と一緒に居たいって思ってくれてるんだな。

あまりに素直に伝えてくるから、可愛く思えて仕方ない。

割り切った関係を望んでいたはずなのに気付いたらどうだって良くなっていた。

ただ近くにずっといるのが意外と悪くなかったから。

付き合いも長くて息もそれなりに合うからなのかも知れない。

まだ恋とか愛とか私にはわからない。

それでも、こんな面倒な彼氏の強引な所とか独占欲とか嫌じゃない。

本当に面倒なのは変わりないけど。
< 126 / 222 >

この作品をシェア

pagetop