執拗に愛されて、愛して

遠距離

こっちに来て1ヶ月程が経過した。


「朝比奈さん、書類チェックお願いします。」

「わかりました」


会社の人ともまあそれなりに上手くやっていて、仕事は相変わらず楽しい。

本社に居る時よりも仕事量がある割に人が少ないので残業も多いけど。

仕事だけではなく生活もそれなりに慣れてきていた。


「朝比奈さんって右手の薬指に指輪されてるんですね」


女性社員に声を掛けられて右手を見ると「ああ」と声を漏らす。

こんな独占欲の塊だけど、気に入って付けている。


「…そう、彼氏から貰った物なんです。遠距離中の」


そういうと、その女性社員は両手で口を抑えて「えええええ!」と驚いた声を出している。


「そんなに仕事もバリバリで彼氏とも上手く行ってるの羨ましいです…。喧嘩とかしないんですか?」

「あはは…」


笑って誤魔化すのは喧嘩なんて割としょっちゅうあるからだ。

遠距離になってからは特に。
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