執拗に愛されて、愛して
『てめぇ掛けてくんのおせぇよ、何時だと思ってんだ』

「仕方ないでしょ!さっきまで仕事で今やっとお風呂とか終わったの!年上の大人の男なら毎日お疲れ様、頑張ってて偉いねとでも言ってみなさいよ!」

『俺にそんなん求めんな!そういうのは玲みたいなキザな男がやることなんだよ』

『雅、お客さんの前だよ。うるさい』


深夜12時半、向こうはまだ勤務中なのにこうして電話を掛けろと言われて掛けているけど普通にお客さん居るらしくて怒られている。

喧嘩するって言っても、こんな子どもみたいな喧嘩だけど。。


「玲くん~、仕事終わりの癒やしが足りてない…。」

『彼氏の前で言うセリフがそれかてめぇ』

『俺も夏帆に会いたいよ。会いに行っちゃおうか』

『玲も変な乗り方すんな』


そんな会話が可笑しくて笑ってしまう。

本当に会いたい、2人はいつもどおり楽しくバーにいて私だけ取り残されている。

『どっちが彼女持ちですか?って聞かれちゃった。実は夏帆ちゃんと付き合ってたの俺かも』

『バカ言ってんなよ、玲に夏帆は無理だろ』


2人の会話を流し聞きしながら、スキンケアをして寝る準備をする。


「というかあんた仕事中でしょ、戻りなさいよ。」

『寂しくなってんじゃねぇかなって思って。そろそろ俺の声恋しかったでしょ?』


相変わらずすごい自信に笑ってしまう。


「バカじゃないの、私も明日仕事だしもうすぐ寝るわよ。あんたも飲みすぎないようにね」

『指輪、ちゃんと着けてんの?』


そして時々入るこの確認。

話に出て今は馴染んだ右手の薬指を眺める。


「…着けてるわよ」

『そ、それならいいわ。おやすみ』


そう言って切られる電話。本当自由な男。

声を聞いたらそこに居る気がするのに居なくて、会いたくても会えない。

こんなの寂しいだけだ。
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