執拗に愛されて、愛して
「ねぇ、何で急に何も言わず来たの…。困るんだけど」


本当困る、こんなにすぐに会えるとか思ってなかったから嬉しくて顔は緩みそうだし。

私らしくない反応が出てしまいそうで、それは恥ずかしいし。

そんなことを思いながら両手で顔を覆う。


「何で、会いたくなかった?」

「そういうことじゃなくて」


会いたかったから困ってるんじゃない。

本当なんでこういう時あえて嬉しいって素直に言えないんだろう。

どこまでも可愛くなれない。


「言えよ、会いたかったって。会いに来てくれて嬉しいって。」


そう言いながら私の頬を両手で少し上げさせて離さない様に、逸らせない様に固定される。

そんなの簡単に言えたら苦労しないっつの!


「それはあんたじゃんか…」


せめてもの強がりでそう言うと、雅は若干呆れた表情で口を開けながらこちらを見下ろしている。

ムードぶち壊しやがってとでも言いたげな顔だ。

こういう時素直になった事が無いんだから仕方ない。
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