執拗に愛されて、愛して
「そうだよ、だから他の男といるって聞いて喧嘩して余裕もなく会いに来たんだろうが。プライドとか恥とかそんなん全部捨てて」


珍しく真剣で真っ直ぐな気持ちに恥ずかしくなって目を逸らすと強引にキスをされる。

逃がさないとでも言われてるようなそんなキス。

逃げたいわけじゃないけど、恥ずかしくてこの状況に耐えられない。

それなのに逸らす事をこの男は許してくれない。

いつになったら私はこの男よりも上手になれる?

久しぶりに再会しても、全く歯が立たずにそれどころか甘く蕩けさせられる。

きっとこんなに溺れさせられるのも、全部あんただから。


「…まだ許してないんだから。人の話聞かず好き勝手言った事」


そう言ってふいと顔を背けると、雅が少しだけ笑う。


「…うん、悪かったよ。何も疑ってた訳じゃないし、信じててもこんなにムカつくんだなって久々に思った」


さっきの強引な態度とは打って変わって優しく抱き締めてくる。

どうすれば私が簡単に許すか分かってやってる。

本当にずるい男。私の事全部わかってる。

だからいつも許せてしまう。

本当は許したくもないのに許してしまうのは、こんな私の事も受け止めてくれるのはこの男しかいなくて、素直になれない私が突き放しても執拗く愛してくれるから。


「夏帆、仲直り。」


そう言って私の顔を両手で、持ち上げて優しく笑いかけてくる。


「喧嘩後にするのめちゃめちゃ良いらしいよ。」

「…本当あんたブレないわね」


そう言いながらもいつも拒めない私は既にこいつに毒されている。
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