執拗に愛されて、愛して

面倒

休日、部屋でベッドに座って壁に凭れ掛かりながら昨夜買った雑誌をぺらぺらと捲って目にしていた時だった。

聞き慣れた着信音が聞こえて片手でスマホを掴んで画面の表示を見る。

画面にはうちの母親の名前が表示されていた。

何の話か分かるだけに少し出るのに躊躇ってしまったが、通話ボタンを押してスマホを耳に当てる。


「もしもし」

『夏帆、あんた最近連絡ないけどきちんと食べてるの?』

「仕送りのお陰できちんと食べれてるよ。というか何歳だと思ってるの」


開幕相変わらずな会話に、笑いながら返事をする。

まだ子供だと思ってるのか、そんな心配。有難い事にいまだに食材の仕送りが定期的に来る。

その分何かしらで返しているけど本当頭が上がらない。


『あんたが早く身を固めてくれたら私も気にせず居られるのに。良い人いないの?』


予想していた通りの話題に苦笑いしか出来ない。

電話の度にこの手の話になるから最近は母との電話が億劫だったりする。


「…居ないけど、でも今は仕事が楽しいから」

『そう言ったって仕事は一生じゃないのに、良いお見合いの話があるんだけど受けてみない?』


お見合いとか毎度流しているけど、このままじゃ勝手に受けられそうな様子。

本当に恋愛したくないし自分には向いていないと思っているから、将来的に相手が見つからなくて良いとすらも思っている。

うちの両親はそんな私を心配して、お見合いや婚活パーティーの話を持ってきたりする。

結婚だけが幸せじゃない、とか私の意思は関係無くて、将来的に1人だと色々不安が親の考えだった。


「(私の人生でしょ。)」


そう思うのに、両親の心配も無碍にはしたくなくてその言葉はグッと喉元で堪えた。
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